・『知的生活の方法』渡部昇一
・『続 知的生活の方法』渡部昇一
・大村大次郎
・『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
・『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一
・日本を凋落させた宮沢喜一
・私的所有権を犯した国家は滅ぶ
・貧富の差がないところは住みにくい
・規制緩和が税金を安くする
・「法」と「立法」を峻別する
・大蔵省の贋金(にせがね)づくり
・裁量権を認めるところに法の支配はない
・主税局の見解「所得税は7%で十分」
・『封印の昭和史 [戦後五〇年]自虐の終焉』小室直樹、渡部昇一
・『新世紀への英知 われわれは、何を考え何をなすべきか』渡部昇一、谷沢永一、小室直樹
・『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん
大蔵官僚に私たち国民が乗せられてはまった例が、昭和天皇在位60年を記念して昭和61年に発行された10万円金貨なる代物です。あれは限定つきで発売するはずだったのに増やしてしまったから、値が下がってしまった。大蔵省発行の10万円金貨が10万円で売れないのですから、やはりどう考えてもヘンです。
しかも値が下がったのは、造りすぎのほかに大蔵省が儲けようとして金の含有量を減らしていたことがわかってしまったからです。国家が錬金術をやるのは、つまりニセ金を造るのはじつに簡単です。金貨で金の含有量を減らせばいいだけのことです。4万円の金を使って10万円にもなる。そしてしかも、その金貨を記念硬貨だからといって兌換(だかん)しないことにしておけば大儲けです。いま、大量の金貨を持っていっても、自国の通貨、お札に替えてもらえない国は日本だけです。お札を金貨に替えてくれない国はあるが、金貨を兌換しない国はない。つまり、国民はまんまと一杯食わされた。しかも天皇の在位60年を利用するなどとは、本来なら万死(ばんし)に値する罪です。
それをやったのが、ミスター円などと評判の方です。私が思うには商品券、地域振興券などよりも、あのときの金貨をすべて紙幣に交換してあげるといったほうがずっと景気刺激には効果があるはずです。それにしてもあの金貨はどこへ行ったのか。この国の民がお上に甘いことを計算した官僚たちの高笑いを許していてはいけない。(加藤寛)【『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛〈かとう・ひろし〉、渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉(光文社、1999年)】
天皇陛下御在位六十年記念硬貨の10万円金貨が「大蔵省の贋金(にせがね)づくり」であったとすれば、これほどの不敬もあるまい。「ミスター円」と呼ばれたのは榊原英資〈さかきばら・えいすけ〉である。かつてテレビ番組で亀井静香からたしなめられてシュンとなっていた姿を覚えている。
日本のエリートが集う大蔵省(当時)や外務省が為してきたことを思えば、やはり東大を中心とした大学教育が誤っているのだろう。返す返すも口惜しいのは「製造費込みでも半分以下の原価にすぎなかった」(Wikipedia)上、約11万枚にも及ぶ偽造金貨が出回ったことだ。
金価格が上昇している現在は16万3100円の値で取引されている(金貨買取本舗)。だが多くの人々は慶祝の記念として購入したものと察する。昭和61年(1986年)といえばバブル景気元年であるが、いくら何でも利殖の目的で購入した人は少ないだろう。
やっていいことと悪いことがある。それが人の道である。しかも自らの過ちを反省する風もなく、堂々とメディアに顔を出す太々(ふてぶて)しさだ。かような人物が社会の規範を崩し、青少年の間に暗い影を落とすのだ。日本はその後、拝金主義の狂騒にまみれ、更にすっっかり萎(しぼ)んだ経済下でデフレの苦い水を20年以上飲む羽目となる。
大学の法学部と経済学部は一旦取り潰して、全く異なるエリートを育てるべきだろう。もちろん大学教師も総入れ替えするのが筋だ。