古本屋の殴り書き

書評と雑文

裁量権を認めるところに法の支配はない/『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一

・『知的生活の方法渡部昇一
・『続 知的生活の方法渡部昇一
大村大次郎
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一

 ・日本を凋落させた宮沢喜一
 ・私的所有権を犯した国家は滅ぶ
 ・貧富の差がないところは住みにくい
 ・規制緩和が税金を安くする
 ・「法」と「立法」を峻別する
 ・大蔵省の贋金(にせがね)づくり
 ・裁量権を認めるところに法の支配はない
 ・主税局の見解「所得税は7%で十分」

『封印の昭和史 [戦後五〇年]自虐の終焉』小室直樹、渡部昇一
・『新世紀への英知 われわれは、何を考え何をなすべきか渡部昇一谷沢永一小室直樹
『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん

必読書リスト その二

 要するに裁量権を認めるところに法の支配はない。ところが、日本人は体質的に昔から裁量権が好きなんです。大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)の大岡裁きが大好きです。しかし大岡裁き大岡越前が絶対的に間違いのない、いい人物だということを前提にしています。全知全能の人間なんて存在しませんから、所詮はフィクションの物語ということになります。実際の大岡越前守の名裁判の話は、物語と考えておいてよいでしょう。(渡部昇一

【『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛〈かとう・ひろし〉、渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉(光文社、1999年)】

 裁量は人任せである。私が知る限りだと日本の企業の場合、中間管理職の裁量権が実に乏しい。ないといっても過言ではない。建築関係だと「親方が全部仕切る」ケースが殆どだ。

 渡部昇一が問題にしているのは官僚の裁量権である。役所の行う許認可が権益となって天下り企業に有利な判断が下される。日本のエリートがこの体たらくであれば、我が国は必ず衰退してゆく。そんなに金儲けがしたいのであれば起業をすればよさそうなものだが、彼らはリスクを取りたくないのだろう。その惰弱さこそが元凶である。

 最近だとレジ袋の有料化義務付けがこれに該当する(2020年7月1日から)。経産省が主導し、法整備をすることなく施行された。びっくりしたのだが国民の大半がこれに賛同した。馬鹿丸出しである。

 義務教育できちんと合理性を教える必要がある。ヨーロッパが決めたルールには必ず意図があることも日本人は知るべきだ。