古本屋の殴り書き

書評と雑文

失われた20年の責任は日銀に/『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』朝倉慶、船井勝仁

『大恐慌入門 何が起こっているか? これからどうなるか? どう対応すべきか?』朝倉慶
『恐慌第2幕 世界は悪性インフレの地獄に堕ちる』朝倉慶
『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一

 ・失われた20年の責任は日銀に

 晩年の父と頻繁に意見交換されていた朝倉慶さんはそごうの経営破綻について次のように詳しく言及していました。
「1985年9月のプラザ合意後、アメリカの要求を受けて金融緩和を進める日銀は、金利をどんどん下げていったのです。そのため国内マネーがジャブジャブになりますが、日銀はそれを放置していました。日銀の怠慢で膨張したマネーは土地と株に向って、不動産や株が急騰し、日本経済はバブルの絶頂を迎えたのです。
 そんなタイミングで日銀総裁に就任したのが三重野康氏でした。三重野総裁は不動産バブルを目の敵にするかのごとく、1989年に三度金利を引き上げ、90年には、不動産向け融資を銀行の貸出残高の伸び率以下とした総量規制を導入しました。おまけに、同年に二度利上げを行い、公定歩合を年率6.0%んまで引き上げてしまいました。当時は『不動産も株も高すぎる。もっと安くしろ』といったバブル潰しの大合唱が起きていたので、三重野総裁は一部マスコミからバブル退治のヒーローとされ、『平成の鬼平』のニックネームまで与えられていました。
 これで大打撃を被ったのが不動産業者、金融業、さらに不動産担保主義を経営の柱にしていた大企業だったわけです。そごうとダイエーはその代表といえました。
 集客力抜群の駅前の土地を取得し、そこに新しい大型店舗を建設。繁盛店にすることで価値を高めた(地価を上げて含み益を増やす)。その土地を担保に銀行融資を受けて、次の新店舗予定地を取得する。このパターンを繰り返しながら、そごうやダイエーは店舗を増やし続けてきたのでした。不動産価格が一本調子に上がっていったので、それに伴い不動産を所有する企業の株価が上昇するというパターンの定着しました。当時の日本は時価総額で630兆円の株式を保有していて、これは世界全体の4割にあたります。つまり、日本が世界の株を制覇していたのです。(中略)
 話をそごうとダイエーに戻しますと、結局、この両社は不動産担保主義に前のめりになりすぎてしまい、やりすぎてしまい、経営破綻に追い込まれていったわけです。けれども、日銀がソフトランディングさせる政策をとることを怠らなければ、倒産に到らなかったかもしれません。
 なのに日銀はちびちびと金利を下げるのみで、他には何も動こうとしませんでした。これこそが失われた20年をつくってしまった最大の理由でしょう。日銀はおかしくなった経済をソフトランディングさせるために、今度は徹底的に金利を下げるとともに大胆な量的緩和、つまり、マネーのバラマキ政策を行なえばよかったわけです。その見本がリーマンショック直後にFRBバーナンキ議長が行った(ママ)未曾有の量的緩和策のQEでした。25年前の日本の失敗を見ていたアメリカはQEで一気に100兆円の対策を行ったため、リーマンショック後の経済停滞を防ぐことに成功しました。
 だから日銀は、プラザ合意後とバブル絶頂期の二度にわたって政策ミスを犯しているわけです」
 そして朝倉さんはこう続けました。
「あり得ないことですが、もしリーマンショック直後にFRBと同時期に日銀が現在のような異次元の緩和に踏み切ったならば、日本経済はとっくに回復をみていたでしょう。アベノミクスも必要なかったかもしれません」


【『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』朝倉慶〈あさくら・けい〉、船井勝仁〈ふない・かつひと〉(ビジネス社、2014年)】

 テキストを入力していると二流出版社のデタラメが露呈する。「行なえば」の直ぐ後で「行った」とあるのは著者の変換ミスの可能性が高いが、これを見逃すのが二流出版社である。私なら絶対に見逃さない。

 前にも書いたが朝倉慶に注目したのは以下の記事を読んだ時である。

船井幸雄.com|“超プロ”K氏の金融講座2009年10月

 その後、何十回となく読んだ憶えがある。

 予測は外れても予想が当たる場合がある。つまり先読みしすぎたケースだ。不確定要素によって時間軸がずれたと考えることができよう。

 土田正顕〈つちだ・まさあき〉の名に隠れて三重野康が見失われないよう書き残しておく。ま、一種の墓標みたいなものだ。尚、三重野のバブル対処に関してはWikipediaにも書かれている。

バブル経済とその崩壊への対処

 三重野を持ち上げたジャーナリストとして佐高信〈さたか・まこと〉の名が記されている。日本の繁栄を憎む左翼の仕業であったのだろう。

 尚、船井勝仁は「いままでは白川日銀前総裁の下で日本だけがなんとか金融秩序を守ってきたのですが」(195ページ)と評価しているが、私としては上念司の白川批判に正当性があると考える。

上念さんによる日銀の白川方明・総裁は絶対に許せない!!!(虎ノ門ニュース2020年2月5日分) - Togetter