古本屋の殴り書き

書評と雑文

金利に翻弄される世界経済/『21世紀型大恐慌 「アメリカ型経済システム」が変わるとき』山崎養世

『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓

 ・金利に翻弄される世界経済

『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ

 1つだけ言えることは、世界第1位の経済大国であっても、無縁に借金できるわけではないということです。
 誰かが、「アメリカは危ない」と判断してアメリカの国債を売り始めたら、売りが売りを呼ぶ展開になり、そうなればもう誰にも止められなくなります。
 アメリカの国債が暴落すれば、通貨ドルの信用も揺らぎ、ドル安が進みます。それは当然、史上最高値の株価に悪影響を与えますので、国債、通貨、株式のトリプル大暴落になることは容易に想像できることではないでしょうか。


【『21世紀型大恐慌 「アメリカ型経済システム」が変わるとき』山崎養世〈やまざき・やすよ〉(PHP研究所、2020年)以下同】

 それなりに面白かったが文章がまずい。「1つ」などと書くセンスを疑う。

 国債の価格が下がると国債金利は上昇する。値下がり分の価格差+金利となるためだ。現在、FRBはインフレを抑制するべく金融引締を行っており、米10年債の金利は上昇し続けている。

 現在のゼロ金利に慣れ親しんだ私たちにとっては、ちょっと信じられないかもしれませんが、1980年代前半、FRB政策金利の誘導目標を20%に設定しており、実際の短期金利が21%に達したこともあったのです。

 日本国債10年物金利は1980年に9.89%まで上がった。この時期、郵便局の定期貯金の金利は8%であった。10年後には2倍になる計算である。いやはや隔世の感がある。

 国家の借金である国債は、金利が上がれば、価格は下がります。現在、世界中に残存するアメリカ国債の平均的な「デュレーション金利感応度)」は、10程度と推計されていますので、1%の金利上昇で国債の価格は約10%下落します。
 仮に金利が、歴史的に見ればそれでも低金利だと言える3%に上がるだけで、国債の価格が約30%下がり、もし金利が5%に上がれば、国債の価格が50%下がるということになりますから、国債の価格が半減してしまう可能性すらあるのです。

「国家の借金」ではなく「政府の借金」である。こうしたデタラメな表現が紙価を下げている。

 個人的には今年の秋頃から大暴落と予想していたのだが、NY筋からはソフトランディングではなく、ウクライナ紛争をテコに軍需産業が復興し、更なる好景気に向かうという話が聞こえ始めた。株価を予知できる人はいない。皆が皆、勝手な予想を述べているだけだ。NYダウは低迷しているが、ひょっとするとどこかで反発するかもしれない。

 新型コロナ騒動は一段落したと言ってよい。ウクライナ紛争はもう1年ほど続くと考えられるが、経済は完全に国家主導で行われる方向にシフトした。

 本書でも具体的に書かれているがアメリカ国民の貧困化を思えば、やはりドルは崩壊することを避けられないように思う。