古本屋の殴り書き

書評と雑文

生存適合OS/『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司、由佐美加子

『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『こうして、思考は現実になる』パム・グラウト
『こうして、思考は現実になる 2』パム・グラウト
『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
『ゆだねるということ あなたの人生に奇跡を起こす法』ディーパック・チョプラ
『未来は、えらべる!』バシャール、本田健
・『ソース あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。』マイク・マクマナス
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり
『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗

 ・生存適合OS
 ・4種類のメンタルモデル

『ザ・メンタルモデル ワークブック 自分を「観る」から始まる生きやすさへのパラダイムシフト』由佐美加子、中村伸也
『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『ブッダの教え一日一話 今を生きる366の智慧』アルボムッレ・スマナサーラ
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ

悟りとは
必読書リスト その五

前野●『ザ・メンタルモデル』というタイトルもすごいですね。

由佐●一般名詞なので、あえて定冠詞の「ザ」を付けて「特定の」というニュアンスを出したつもりです。人間には、【行動を突き動かしている無意識の自動化されたシステム】があって、わたしはそれを「【生存適合OS】」と読んでいます。このOS(オペレーションシステム)の目的は、自分の痛みを避けて生きること。この目的に沿って、この社会を生き抜けるよう最適化されたシステムがあって、わたしたちの脳ではデフォルトでこのシステムが勝手にまわっています。このシステムに無自覚につかわれているうちは、無自覚に規定された行動しかとれなくなるんです。

前野●はい。

由佐●わたしがやっているのは、その自動化されたシステムから人間を解放する作業です。映画『マトリックス』をイメージするとわかりやすいかもしれません。誰もが適合OSに支配された仮想世界のなかで生きている。そこから人間を外に出すためには、「【自分はそうしたシステムのなかで知らないうちに自動的に駆動している】」ことを各人が自覚するしかありません。どうすればそれができるかをさんざん探し、たどり着いたのが「対話を通じてこうした構造を明らかにし、システムを俯瞰(ふかん)することでそれにつかわれなくなる」という方法でした。

前野●「脳の働きによってつくられた現実」と「本当の世界」が分離していることに気づいてもらうわけですね。対話ということは、教えたり、導くわけではない?

由佐●そうです。わたしが何か教えるわけではありません。なぜなら、誰もが本当は無意識に内側では知っているからです。ただ一度も顕在意識で自覚したことがないから、気づくことができないだけ。だから対話を通じて問いかけると、自然に「そうか、だからこういうことが起きるんだ」とわかるんです。

【『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司〈まえの・たかし〉、由佐美加子〈ゆさ・みかこ〉(ワニプラス、2020年)】

 昔、似たようなことを考えた覚えがある。

宗教OS論の覚え書き

 由佐美加子の卓見は脳内のアルゴリズムが「痛みを回避するシステム」と見抜いている点にある。しかも実務的な面からアプローチして、「苦を回避する」という仏教と同じ答えを導き出しているのだ。「参りました」と私は本を置いて手をついた。

 最適化されたシステム内をぐるぐる回る生きざまをブッダは「輪廻」(りんね)と説いたのだろう。しかも我々は「スタイル」(石川九楊)として自ら好んで同じ反応を繰り返しているように見える。

 各人各様のOSは家庭や学校など自分が生きてきた狭い世界で形成されたものだ。

「君たちの教育は、何かになるようにと励ましますが、それでは君自身を理解することにはなりません」(自由の問題 3/『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ

「世界は衝突しあう信念やカースト制度階級差別、分離した国家、あらゆる形の愚行、残虐行為によって引き裂かれています。そして、これが君たちが合わせなさいと教育されている世界です。君たちはこの悲惨な社会の枠組みに合わせなさいと励まされているのです。親も君にそうしてほしいし、君も合わせたいと思うのです」(教育の機能 4/『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ

 生存適合OSは本能に基づいている。ここにとどまっている限り英知が発揮されることはない。我々は果てしない競争・奪い合い・戦争を繰り返さざるを得ない。

 小さな違和感を手放さないことが大切だ。「おかしいな」と思ったことをしっかりと見据え、心の隅に仕舞っておけば必ず答えは出てくる。人生は自ら問うて、答えに至る道程なのだ。