・『足裏を鍛えれば死ぬまで歩ける!』松尾タカシ、前田慶明監修
・『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
・『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
・足の裏は全身を支配している
・足裏の面積は1日の時間によって変化する
・柳生心眼流の極意 平直行×菊野克紀
・イス軸法との出会い
・『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』齋藤孝
・『息の人間学 身体関係論2』齋藤孝
・身体革命
昭和33年の夏、足の裏の面積が1日の時間によって変化するという結果を、日本体育学会で発表したところ、それを中部日本新聞が報道した。すると、医学とくに東洋医学の人達から、沢山の問い合わせが殺到した。患者の歩行訓練の効果判定になりそうだといか、足のツボに関係があるかも知れないということであった。新聞に報道された内容は、「足の裏の面積は、朝6時に起きた時が一番小さい。正午頃になって最も広くなる。30分昼寝をした後には、10平方センチほど小さくなり、そのあと佐鳴(さなる)湖(浜松市郊外・1周約6キロメートル)をゆっくり駆け足したところ、こんどは10平方センチメートルくらい大きくなった。そしてその面積は夜9時ころまで続き、その翌朝にはまた前日の朝の大きさに戻る。足の裏の面積の増減の甚だしい部分は足底中部のいわゆる土踏まずの周辺で、午後4時に駆け足をした直後には、朝6時に測った時よりも、20.7パーセントも広がっていた。また、興味のある結果として、1日の足の裏の面積の変化は、身長の変化と正反対の曲線を描くことであった。この因果関係はさまざまの要因が複雑に含まれていることが予想される」というものであった。興味のある問題として今なおその解明を続けている。
【『足の裏は語る』平澤彌一郎〈ひらさわ・やいちろう〉(筑摩書房、1991年/ちくま文庫、1996年)以下同】
「靴は夕方に買え」との俗説がある。心臓の位置から最も遠い足は血液や体液の循環が悪く、夕方以降になるとむくんでしまうというのがその理由だ。平澤が発見したのは接地面積である。体が活動することで体位が下がってくるということなのだろうか? 骨と筋肉で土踏まず部分を浮かしているとすれば、さほど的外れでもないように感じる。
「10平方センチメートル」は2×5cmの大きさである。正方形だと3.16の2乗だ。親指ほどの大きさと考えてよい。これが増えたり減ったりしているわけだ。「20.7パーセント」も広がるとなれば、足は1日を通して扁平に向かうのだろう。我々は自分の体を知らない。その事実をよくよく味わうべきであると思う。
言葉や文字の中には、足の裏とかかわりをもつものが、おどろくほど沢山ある。まず、われわれがふだんよく使っている「からだ」であるが、この言葉の中には、大変不思議な意味がかくされている。これは、人間が大地の上に、2本の足の裏で、しっかりと立ち構えているさまを表す「からだち」(軀立ち)という大和言葉に由来する。
「からだ」……。なんと響きのよい、そしてまたなんと重みのある言葉であろう。このことを知った夜は、嬉しさと驚きのあまり、朝まで興奮してよく眠れなかった。
「コツをつかむ」のコツとは骨のことだ(『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎)。体の正字は「體」である。
高岡英夫は『意識のかたち』(講談社、1995年)で「身体言語」なる概念を披露している。日本語は骨と腰にまつわる言葉が豊富だ。
何かを知って「嬉しさと驚きのあまり、朝まで興奮してよく眠れなかった」ことがある人は少ない。私自身、ない。それでも夜を徹して本を読んだことがあれば、想像することは可能だろう。