古本屋の殴り書き

書評と雑文

超富裕層のリバタリアンとコーク一族/『グレート・リセット前夜 2025年の世界と支配者たちの最新工作』高島康司

「グレート・リセット」の衝撃的内容

 ・大恐慌と福音派のリバイバル運動
 ・超富裕層のリバタリアンとコーク一族

トランプ熱狂支持属【コーク一族と富裕層のリバタリアン

 こうした福音派の他に、トランプを資金的に支援し、大統領へと押し上げた勢力がいる。それは、民主党を強く嫌悪する超富裕層のリバタリアンだ。これら富裕なリバタリアンは、コーク一族が運営する組織、「アメリカ人のための繁栄財団」に結集している。
 ちなみにコーク一族とは、カンザス州、ウイチタ市に本部のある「コーク・インダストリーズ」を所有する一族だ。昨年亡くなったデビッド・コークと、その兄のチャールズ・コークが運営を全面的に担っていた。「コーク・インダストリーズ」はアメリカ国内最大手の石油精製業者のひとつである。石油精製業を中核として、パイプラインの敷設や原油の掘削など、エネルギーに関連した幅広い産業に多くのグループ企業を持つ。
 株式は未上場だが、全米で第2位の規模の巨大企業である。未上場であるため、株主の利益を保護するために設定されているさまざまな会計や金融の規制はこの会社には適用されない。金融当局の監督なしに、巨額の資金を好きなように動かすことのできる自由がある。特にチャールズ・コークは、ジョージ・ソロスさえ超える膨大な資金を、自らの理想を実現するために使っている。

【『グレート・リセット前夜 2025年の世界と支配者たちの最新工作』高島康司〈たかしま・やすし〉(徳間書店、2021年)以下同】

 カネで政治を動かせるとすれば、政治的権利はマネーより価値がなくなったのだろう。すると世界一の富豪は世界の王になれるのだろうか? 彼は玉座で何を望むのか? 果たして自分の思い通りに政治を執り行うことが人間にとって喜びであるのだろうか?

 富裕層とは無縁なため、コーク一族を知らなかった。覚え書きとして残しておく。

 チャールズ・コークはこうしたオバマ政権を打倒するために、あらゆる手を尽くした。コークは無尽蔵な資金を使って、アイビーリーグの有名大学や著名なシンクタンクに巨額の寄付を行い、それらを実質的に買収し、リバタリアンの政策を立案するセンターに作り替えた。「ケイトー研究所」「ヘリテージ財団」「フーバー研究所」などのシンクタンク、さらにジャパンハンドラーが結集する「CSIS」にもコークは巨額の寄付を行な(ママ)っている。こうした大学やシンクタンクは、チャールズ・コークが強く支持するリバタニアリズムに基づく政策を立案し、歴代の政権に提案している。

 民主政は票の売買を許容していると思う。政策を吟味した1票も、なんとなく入れるタレント候補への1票も、何も考えずに組織の指示に従う1票も平等なのだ。カネをもらって入れた1票とカネを断って入れた1票も重みは同じである。その意味で現行は「株主民主政」と呼ぶのが相応しい。大株主(企業、業界、宗教団体)に有利な実態があるためだ。

 ただし米国の場合はシンクタンクが政策立案を行っている。日本だと利権のみで政策は不問に付されている。脚本を欠いているところが日本の弱点だろう。激しやすい世論に流されて憲法を改正することなく戦争に突き進む懸念がある。