古本屋の殴り書き

書評と雑文

日本国民は一命をなげうって戦うか?/『子産』宮城谷昌光

『晏子』宮城谷昌光

 ・日本国民は一命をなげうって戦うか?
 ・疾病の意味
 ・学問と戦争

『湖底の城 呉越春秋』宮城谷昌光

「徳によって恵みをほどこし、刑によって邪を正し、詳によって神に仕え、義によって利を建て、礼によって時に順(したが)い、信によって物を守るのです」
 徳、刑、詳、礼、信のうち、詳は祥(しょう)にかようものがある。すなわち祥は吉凶のきざしであり、そのきざしをつまびらかにすることを詳というのである。
 更に申叔時はいう。
「民の生活が豊かになれば徳は正しくなり、民を使うのにむだがなければ万事は節度をもち、時に順えば万物が成るのです」
 子反はますますいやな顔をした。
「いま楚は、内では民を棄て、外では誼(よしみ)を絶っている。神聖な盟(ちか)いをけがし、誓いのことばを破り棄て、時を奸(おか)して出動し、民を疲れさせて、欲望をとげようとしている。民は信ずるところをうしない、進んでも退いても罪に問われることを恐れている。人は落ち着くところがないのを憂えている。それでは、たれが一命をなげうって戦うことをしましょうか。あなたはせいいっぱい任務をはたされよ。わたしは二度とあなたにお目にかかることはありますまい」

【『子産』宮城谷昌光〈みやぎたに・まさみつ〉(講談社、2000年講談社文庫、2003年)】

 岸田首相に徳はあるだろうか? ないね。これっぽっちもないよ。人事と増税しか考えてない。まず政治家としての覇気を欠いているのが致命的だ。あんな公家みたいなタイプが習近平金正恩と勝負できるはずもない。

 民の生活は豊かになっただろうか? 否(いな)である。アメリカのような極端な貧富の差はないが日本国民全体が貧しくなっている。ここ30年にわたるGDPの低迷および賃金の下落傾向は目を覆いたくなるほどの惨状で、日本だけがなぜか一人負けしている有り様だ。

 憲法改正もさることながら、官僚とマスメディアを一新する必要があると考える。連中は敗戦以降、アメリカと通じているような気がしてならない。

 というわけで日本国民が一命をなげうって戦う状況にはない。それでもいざとなれば父祖の無念を晴らすべく立ち上がる男子もいるに違いない。

 日本国を正しくあらしめるためには、まず天皇陛下と国民が親しく交わることである。次に国家の象徴である天皇を蔑(ないがし)ろにする左翼勢力を一掃すべきである。早急にスパイ防止法を制定し、片っ端からしょっ引くことが望ましい。更に天下りをした官僚と天下りを推進した官僚も罪に問うべきだ。

 敗戦以降、アメリカが行ってきた好き勝手を思えば、まずは日本がインド、ASEAN諸国、そしてロシアと手を組んで中国の封じ込めを行う。その上で一気に安保条約を結ぶ。こうすればさすがのアメリカも手を出すわけにはゆくまい。

 あるいは中国とアメリカが戦争を行うようありとあらゆる謀略を仕掛ける。米国内における中国のスパイ活動を支援するくらいやってもいいんじゃないか?

 長い目で見れば欧米とは手を切った方がよい。「発見の時代」(Age of Discovery/大航海時代)以降、世界を混乱に導いているのは結局白人なのだから。

 余談になるが、「いわばその会は斉の桓公の独壇場であり、」(上巻254ページ)とあった。宮城谷とは思えないミスである。「独擅場」(どくせんじょう)が正しい。