古本屋の殴り書き

書評と雑文

パックス・アメリカーナの崩壊

・3月10日、中国の仲裁でサウジアラビアとイランが和解した。
・非米側が、米国側が対露制裁と称して売ってくる喧嘩を中露主導の非米側が積極的に買っていくと、米国側は自滅が加速して覇権崩壊し、世界は中露主導の非米・多極型の覇権に転換していく。
習近平はまず自分の独裁を強化して党内の親米派を無力化する必要があった。
・サウジ側から中国側への石油ガス販売はドルでなく人民元などで行い、米覇権の根幹に位置していた石油のドル決済体制(ペトロダラー体制)を破壊する策も決めた。
・だがいまや米欧日の経済は衰退しており、世界の経済発展の中心は中露BRICSなど非米側に移りつつある。

 サウジを安保的に対米自立させる早道は、サウジと周辺諸国との対立や緊張関係を全部解決してしまうことだ。周辺との対立がなくなれば、サウジは米国の兵器を配備する必要がなくなり、米国の諜報に頼る必要も低下する。そして、イエメン戦争やカタールとの対立、国内シーア派反政府運動など、サウジと周辺との対立のほとんどは、イランと和解することにより解消できる。ISISやアルカイダなどイスラム主義のテロ勢力もサウジの内部的な脅威者たちだが、これらは米諜報界の支援がないとしぼんでいく。サウジとその子分であるアラブ諸国が対米従属をやめると、米諜報界や米軍がアラブ諸国に駐留してISカイダを支援する構図も消失し、ISカイダはしぼむ。イスラエルも以前はサウジにとって脅威だったが、トランプがイスラエルとサウジの仲を仲裁して以来、イスラエルはサウジの敵でなくなっている。イランと和解すれば、サウジは対米自立しても自国の安全を維持できる。


田中宇〈たなか・さかい〉:サウジをイランと和解させ対米従属から解放した中国 2023年3月17日