古本屋の殴り書き

書評と雑文

声が変わると体が変わる/『声が変わると人生が変わる! 声を良くする完全マニュアル55』長谷川淨潤

・『気導術の挑戦 進化する超絶瞬間療法の全貌』鈴木真之

 ・声が変わると体が変わる

 そのあとも、お師匠さんや先達の方々の声を日々研究&じおっ~し、試行錯誤の末、発見したのです。


「【声は変えられる!】」


 そして、


「【声をだすには簡単なコツがある】」


 ここから私の人生が変わりました。
 まず体調が変わりました。お坊さんが長生きできる理由も分かる気がしました。
 そして心の調子も変わりました。堂々としてかつ穏やかになるのですね。
 肚(丹田)がありながら、みぞおちが抜けているということでしょうか。「上虚下実」(じょうきょかじつ)と言われる平安でなおかつ自信に満ちた感じで、これこそ整体、自然体と呼べる感じです。


【『声が変わると人生が変わる! 声を良くする完全マニュアル55』長谷川淨潤〈はせがわ・じょうじゅん〉(春秋社、2015年)以下同】

 長谷川は幼少時から声にコンプレックスを持っていた。しかも音痴であった。修験道を通し読経に励む中で声が変わった。その後、長谷川が主宰する氣道協会で「声の学校」という講座を開始する。

 私は「いい声をしている」とよく言われる。自慢ではない。なぜなら自分では「普通」と思っているからだ。初めて褒められたのは小学3年の時だ。皆の前で「小野君は声がいいよね」と担任の先生から言われた。自覚がなかっただけに心底驚いた覚えがある。両親の声がでかい上に、3人兄弟(当時)で喧嘩ばかりしていたのだから大人しい子供でなかったのは確かだ。

 中学で野球部に入ったのだが、喉が枯れるまで声出しを強要される。変声期の後で無理なことをするものだから、どんどん声が太くなっていった。

 では、誰かに何かを伝える時に一番大切なことは何だと思いますか?


 ――実は、単純と思われるかもしれませんが――
 それは「相手に意識を向ける」ということなのです。
 意識を向ける。つまり氣を向けるということですね。
 これを愉氣(ゆき)といいます。(中略)
 もう一度言います。
相手や【「何かに意識を向ける」こと「愉氣」】といいます。
 つまり、意識を向けるだけで氣が伝わるのです。氣が輸(おく)れるのです。
 そのため、昔は輸送の輸で輸氣と書いていましたが、どうせ輸るなら愉しい氣がいい。それで愉氣という漢字になったのですが、さらには愉しいだけでなく、広い青空のような天の気持ち、天の心、天心(てんしん)で愉氣できたらいいですよね。

「気」は略字で、「氣」が正字である。戦前までは「氣」と書いていた。

《以上のように「気」の原義をたずねると、『説文解字』では「御飯を炊く時に出る湯気」であるのに対して、白川静によれば「運気の流れることを示す」となります》(第07話:藤堂明保VS白川静にみる「気」の原義 - 安神堂の慎思録)。

 若杉友子は「【氣】という漢字はエネルギーを八方位に広げる。【気】という漢字はエネルギーを〆る。」との自説を掲げているらしい(本当は深〜い意味があった!【気】を【氣】と書く6つの理由 | Rainbow Gathering)。

「气」(きがまえ)は湧き上がる雲の象形である(部首「气(きがまえ)」の意味・成り立ち・読み方・画数を学習)。氣がエネルギーの流れを意味するのはストンと腑に落ちる。

「愉氣」という言葉を初めて知った。実にいい言葉である。眼の前にいても相手をよく見ていないことは意外と多い。自分の考えを押しつけようとする時は特にそうだ。親も我が子を見ているようで見ていない。いじめ被害に気づかぬ親の眼は節穴と言っていい。親の無関心といじめを傍観するクラスメートの無関与には通い合うものがある。

 愉氣から直ぐに思い浮かんだのはペットを愛(め)でる飼い主である。言葉が通じないからこそ気持ちを強く表すのだろう。

 話題が多岐に渡っており、具体的な整体法も多く紹介している。どこを読んでも勉強になる。

 途中でクリシュナムルティの名前が出てきて驚いた。