古本屋の殴り書き

書評と雑文

診断基準がなく誤診しやすい1型糖尿病/『糖尿病の真実 なぜ患者は増え続けるのか』水野雅登

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』ロバート・H・ラスティグ
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
映画「糖尿病の不都合な真実」

 ・診断基準がなく誤診しやすい1型糖尿病

 意外なことに、1型糖尿病の全体的な診断基準はありません。日本糖尿病学会が定める3つのタイプの診断基準はあります。しかし、どれにも当てはまらない1型糖尿病が多く存在します。


【『糖尿病の真実 なぜ患者は増え続けるのか』水野雅登〈みずの・まさと〉(光文社新書、2021年)以下同】

 知人が1型糖尿病であるため勉強中。1型は自己免疫疾患で生活習慣とは関係がない。児童期に発症することが多い。

 このために、各医師によって1型糖尿病の診断には、じつはかなりのブレが生じています。つまり、同じ患者さんに対して、Aクリニックでは2型、B病院では1型、C病院では2型、と異なる診断がされることが起こりえます。診断が違えば当然ながら治療内容も変わってくるため、Aクリニックでは「まだインスリンを打つ必要はありません」、B病院では「いつ分泌ゼロになるかわからないので、今すぐインスリン注射を開始しなければ、命の保証はできません」と、違う治療を提示される……ということになります。
 実際に、他の病院で「すぐインスリン導入! さもなくば……」という説明をされたという患者さんを検査したことがありますが、その患者さんのインスリン分泌はかなり残っており、インスリン注射は全く不要な状態でした。
1型糖尿病」と診断されるケースでは、この診断と治療に「かなりの差」が出てしまうことが、大きな問題なのです。というのも、インスリンの分泌が残っている場合と、ほぼゼロの場合では、血糖値の変動が大きく異なるため、治療に大きな差が出るからです。

 エ!? こんな重大なことが放置されているのか? 厚生労働省はなにをしているのだ?

「どれもこれもインスリン注射」となるその理由は、「インスリン自己注射を早期導入すれば、ベータ細胞を残せる」という考えにあります。しかし、これが大きな間違いであることは、前述の通りです。インスリン自己注射によって、ただでさえ弱っているベータ細胞にさらに負担をかけ、弱体化させることになります。
 私は、インスリンの自己分泌残存型と分泌ゼロ型では、治療を分ける必要があると考えています。具体的には、インスリンの自己分泌が残っている緩徐進行1型糖尿病と、インスリン分泌の残存が多い1型糖尿病の扱いは、分泌ゼロ型とは別にするべき、ということです。

 水野は「糖尿病の真の黒幕はインスリン」(第2章)と主張している。まだ第2章に辿り着いていないので改めて書くことにする。

 厚生労働省や医師にきちんと責任を取らせる法改正が必要だろう。就中、不作為に対しては厳しい姿勢で臨むべきだ。

 尚、水野の文章はわかりやすいのだがくどい。