・『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
・現代人は「座りすぎ」で死ぬ
・空軍パイロットの身体的ダメージ
・クッション性の高いシューズが足のバイオメカニクスを損なう
彼(ジェームズ・A・レヴィン博士:メイヨー・クリニック、アリゾナ州立大学肥満解決イニシアチブの責任者)はさらに続ける。「座ることは、喫煙より危険であり、エイズより多くの人を殺し、パラシュートで降下するよりも危ない。」それから、こう締めくくっている。「私たちは座ることで死に至るのである」と。
この優秀な博士はただの人騒がせな人物ではない。多数の研究に支えられたレヴィン博士、および急速に増えているこの分野の専門家たちは、2時間座るだけで、心疾患、糖尿病、メタボリックシンドローム、がん、腰痛、頚部痛、その他の整形外科的な問題のリスクを増大させると主張する。座ることは、喫煙と同じく寿命を縮めるのだ。
多くの研究により、長期にわたる座位がもたらす影響はエクササイズや他のよい習慣を介して改善するような、可逆的なものではないことも実証されている。つまり、きちんと食べ、1日1時間まじめに運動しても、起きている時間のほとんどを座って過ごしていれば、ジムでのエクササイズの恩恵を無効にしてしまうことになる。運動をしている人も、運動不足な人のままである。
一部の専門家は「座ることは喫煙よりも悪質である」と主張する。タバコを1本吸うことは、寿命を11分減らすという研究結果があるが、2008年に行われたオーストラリアの研究報告によると、25歳以降、テレビを1時間視聴するごとに寿命が21.8分短くなるとしている。レヴィン博士は1時間座るごとに寿命が2時間短くなると主張する。
座って働く典型的なオフィスワーカーは建設、金属工業、輸送などの業種よりも筋骨格の損傷が多い。ある研究者は、「座ることは、仕事で重い物を持ち上げるのと同じ職業的リスクである」と結論づけている。【『ケリー・スターレット式 「座りすぎ」ケア完全マニュアル 姿勢・バイオメカニクス・メンテナンスで健康を守る』ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット、グレン・コードーザ:医道の日本社編集部訳(医道の日本社、2019年)以下同】
本来であれば記事タイトルを「坐りすぎ」と記すところだが書籍タイトルに倣(なら)った。
ま、健康オタクであれば「何を今更……」という程度の内容だ。ただし、具体例や表現は参考になる。尚、余裕があれば書くが、本書で紹介されている歩き方は誤りだ。著者は一流の理学療法士のようだが脇が甘い。
戦前までの日本人は畳の上で生活をしていた。我々が考える以上に立ったり坐ったりを繰り返すことが多く、それがスクワットの効果を発揮していたという。
上記テキストの11分とか21.8分などというのは鵜呑みにする必要はない。まやかしだ。健康にもかかわらず短命な人もいれば、病気で長生きする人もいる。
今日、世界保健機構(WHO)は身体的非活動、つまり「座りすぎる」ことで世界中で毎年約320万件の死亡を引き起こしているとし、予防できる死亡原因として第4位にランクづけしている。
肝心なのは「長時間にわたって坐り続けることが背骨や腰に負担を与えること」だ。呼吸器系や循環器系にもよくないことだろう。人体で最も大きい筋肉は大腿四頭筋で(THE BUILD Media)、更に足裏のアーチ構造を見れば明らかだが、人間の体は歩くようにできている。つまり、狩猟採集を行うことに特化していると考えてよい。
武田邦彦によれば、冷蔵庫が出回るまで主婦は1日に2回買い物へ行ったという。そこで提案したい。頻繁に買い物に行くことを。しかも敢えて少し遠い店まで足を運ぶことが望ましい。これが現代の狩猟採集であると自覚せよ。自転車は控える。荷物は手で持たないようにデイパックやバックパックを用意する。量が多いのであれば背負子(しょいこ)がオススメだ。