古本屋の殴り書き

書評と雑文

出刃庖丁デビュー 0勝1敗

 近所のスーパーで小鯛を買ってきた。調理法を調べるのが面倒だったので、「刺し身用」との記載が目を引いたのだ。4尾で598円。丸魚(まるざかな)を買うのは初めてのことなので高いか安いかはわからない。小鯛と目が合ったというのも購入した理由である。

 ウロコ取り器は使いやすい。身に押しつけるように動かすとウロコが飛びにくい気がする。

 貝印の「関孫六 銀寿」が届いたので慌てて魚を買いに行ったというの真相である。早速取り出してコピー用紙を試し切りしたところ、普通に切れた。で、そのまま使った。

 一番驚いたのは出刃庖丁の重量である。221gなのだがずっしりとした手応えがあり、誤って落とせば床に突き刺さることだろう。10000CCが166gだから55gの差だが感覚としては1.5倍以上の違いがある。

 出刃は骨を叩き切ることもあるので峰(背)が厚い。もちろんそれは知っていた。

 胸を高鳴らせながら庖丁を握った。ウーム、上手く切れない……。三枚に開いたのだが一枚も上手くいかない。ようやき気づいた。「切れない」のだ。やはり研いでおくべきだった。

 骨には身がどっしりと付き、背ビレや尻ビレも同様だ。どんどん食べる部分が少なくなってゆく。

「見てくれよりも中身だ」と己(おの)が心を叱咤し、結果的にニ人前ほどの刺し身ができた。肉がたっぷり付いた骨はそのまま汁物にした。

 忸怩(じくじ)たる思いがウロコのように貼りついた。牡蠣だし醤油とチューブのわさびを添えた。

 いやはや絶品である。たまげた。札幌で食べた鮨(すし)を思い出したほどだ。小鯛を侮るなかれ。