古本屋の殴り書き

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マンモグラフィー検査の偽陽性/『生と死を分ける数学 人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ』キット・イェーツ

数学

 ・マンモグラフィー検査の偽陽性

・『数の発明 私たちは数をつくり、数につくられた』ケイレブ・エヴェレット

 じつは医者でさえ、マンモグラフィー検査が陽性であるということの意味をうまく解釈できない場合が多い。2007年に160人の産婦人科の医師を対象として、ある調査が行われた。この調査では、医師たちに、マンモグラフィー検査の精度と全人口に対する乳がん罹患率に関する次のような情報が与えられた。

 ――女性が乳がんになる確率は1%(罹患率
 ――女性が乳がんである場合に、検査結果が陽性になる確率は90%
 ――女性が乳がんではないのに、陽性の結果が出る確率は9%

 その上で、医師たちに次のような多肢選択式の問いを出した。いわく、以下の申し立てのうちで、マンモグラフィー検査で陽性となった患者が実際に乳がんである確率を、もっともよく特徴づけているのはどれか。

 A その女性が乳がんである確率は81%である。
 B マンモグラフィー検査の結果が陽性だった女性10人のうちの約9人が乳がんである。
 C マンモグラフィー検査の結果が陽性だった女性10人のうちの約1人が乳がんである。
 D その女性が乳がんである確率は1%である。

 もっとも多かった答えは、Aだった。つまり、陽性という検査結果は81%(10回に8回)正しい、というのだ。ほんとうにそうなのだろうか。

 図6を見てゆくと、正解がわかる。乳がん罹患率が1%だとすると、ランダムに選ばれた1万人の女性のうちの平均100人が乳がんである。そのうちの90人は、マンモグラフィー検査で正しく乳がんだと告げられる。その一方で、乳がんでない9900人の女性のうちの891人も、誤って乳がんだと告げられる。したがって、検査で陽性が出た981人中90人、つまり約9%だけが実際に乳がんなのである。恐ろしいことに、産婦人科医たちは乳がんである確率を過大に評価しており、正解のCを選んだ医師は回答者の5分の1しかいなかった。全員が4つの選択肢からでたらめに答えを選んだとしても4分の1は正解するはずだから、当てずっぽうよりひどい結果といえるだろう。(中略)
 たいていのスクリーニング・プログラムでは、一度きりではなく繰り返し検査を受けることになっているが、検査を繰り返すと、じつは偽陽性が出る可能性が高まる。偽陽性が10%(つまり0.1)という一定の確率で出るとすると、乳がんでない人の検査結果が正しく陰性になる確率は90%(つまり0.9)だが、検査を7回受けても偽陽性が出ない確率は、(0.9を7回かけるから0.9の7乗となって)半分以下(約0.47)になるのだ。いいかると、マンモグラフィー検査を7回受けたときに乳がんでない女性が1回以上偽陽性になる可能性は、すべて陰性になる可能性より高い。(※イギリスでは)50歳を超すと、3年に1度はマンモグラフィー検査を受けるよう勧められる(日本では40歳以上で2年に1度の検査が推奨されている)から、スクリーニング・プログラムに参加した女性は、生涯に一(ママ)度は偽陽性の判定を受けることになるのである。

【『生と死を分ける数学 人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ』キット・イェーツ:冨永星〈とみなが・ほし〉訳(草思社、2020年/原書、2019年)】

 草思社も落ちたものだ。そもそも、「一度」や「一つ」は漢字表記にするのが当たり前で、1度や1つというテキストを見ると殺意が湧いてくるよ。そのうち、1長1短とか、1石2鳥と書く輩が出てきそうだな。

 校正に難はあるものの内容は文句なしだ。中ほどまでしか読んでないが教科書本としておく。

 確率には母数がある。「女性が乳がんになる確率は1%(罹患率)」という場合の母数は100人以上である。つまり、「私は1%乳がんである」とはならない。

 そして母数は前提によって変わる。投げ上げたコインの表が出る確率は50%である。では、「表が続けて2回出る確率は?」と問われれば、投げる回数を増やす必要がある。2回投げた場合だと25%となる(表表、表裏、裏表、裏裏)。じゃあ、3回投げた場合はどうか? ちょっと考える気になれない。「年寄りをからかうのもそれくらいにしておけ」と言いたくなる。

 確率とは「可能性の大きさ」を示したものだ。

 飛行機を怖がる人はいまだに多い。特に東京生まれだと飛行機に乗ったことがない人は予想以上に多い。飛行機事故で死亡する確率は1/1370万で、交通事故死の1/10000より遥かに低い。それでも飛行機事故から受ける衝撃が確率を無視させるのである。

 人が一生の間に局地的な隕石、小惑星、彗星の衝突で死亡する確率は「160万分の1」だという。

 自動車事故に遭う確率は90分の1、火事に遭う確率は250分の1、竜巻は6万分の1、落雷は13万5000分の1、サメに襲われる確率は800万分の1。米国の宝くじパワーボールに当たる確率にいたっては1億9500万分の1だ。

宝くじより高い? 隕石に当たって死亡する確率 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

 因みに宝くじで1億円が当たる確率は1/500万である(夢が壊れる?宝くじの1等当選確率を種類別に計算してみた結果)。宝くじファンは一生のうちに500万枚の宝くじを購入できる可能性を考えるのが先だ(200円×500万枚=10億円の経費となる)。

 家庭内での死亡事故も意外と多い。

 家庭内事故による死亡率は、交通事故に比べてかなり高いです。具体的には、交通事故で死亡する人数は約4.5倍の人々が家庭内事故で亡くなっていると報告されています。2021年のデータでは、家庭内事故による死亡者数は13,352人で、交通事故による死亡者数2,636人の5.1倍だったと www.longlife-lab.jp 。

 家庭内事故の主な原因としては、溺死、窒息、転倒・転落などが挙げられます。暮らしのタネ は、溺死、窒息、転倒・転落の3つが家庭内事故の死因トップ3であると述べています。

 特に、小さな子どもや高齢者は、家庭内事故の危険にさらされやすい傾向にあります。こども家庭庁 の報告では、0歳〜4歳の子どもが、0〜14歳の事故の約55%を占めていると述べています。兵庫県警察 は、過去に群衆事故で大きな被害が出た例を挙げ、その被害の大きさを示しています。

 家庭内事故の発生場所としては、居室、階段、台所・食堂などが挙げられます。公益財団法人 長寿科学振興財団 は、高齢者の事故が多く発生する場所として、居室を最も多く挙げています。

【Search Labs | AI による概要】

 確率は直感が当てにならないことを教えてくれる。そして疾病検査の確率で最も大切なことは「偽陽性偽陰性を避けることはできない」という事実である。とすると、確率や検査結果は“読み解くべき数字”として扱う必要がある。

 検査結果は「絶対」ではない。むしろ、我々が医療に抱く信仰のような態度にこそ問題があるのだろう。常々書いてきた通り、医師こそは現代の僧侶・聖職者である。