古本屋の殴り書き

書評と雑文とChatGPTと

徳本栄一郎

 39冊目。『田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児』徳本栄一郎〈とくもと・えいいちろう〉(文藝春秋、2022年)/著者の定見の無さが露呈しており、ペンの振れが目立つ。賛否両論ではなく、どっちつかずの印象が強い。それでも目を瞠(みは)る内容が多く、田中清玄〈たなか・きよはる〉の人生を俯瞰できる。昭和を振り返る際に三島由紀夫と田中清玄は「よき補助線として」機能すると個人的に考えている。タイプは全く異なるのだが、1960年代の学生運動に期待し、常に国家の行く末を憂えていた心情が重なる。学生運動は結果的に岸信介の官僚主導国家を防いだ。戦中~戦後を陰で支配してきた革新官僚の流れが止まった瞬間でもあった。