・『サレンダー 自分を明け渡し、人生の流れに身を任せる』マイケル・A・シンガー
・生きものの基本的な営みは拡張することと収縮すること
・エネルギー状態とスペース状態
・『「今この瞬間」への旅 スピリチュアルな目覚めへの明確な手引き 新訳版』レナード・ジェイコブソン
・悟りとは
一つひとつの生きものの基本的な営みは、拡張することと収縮することです。広がることと縮むこと、と言ってもよいでしょう。拡張した生き物は「スペース」となって四方に浸透してゆきます。収縮した生き物は凝縮し、「かたまり」になります。私達は個人としてもグループとしても、「スペース」「エネルギー」「かたまり」のうちのどれかになって見えます。そしてそれは、私達が自分で選んだ拡張と収縮の割合によって決まってきます。また、その時にどんなバイブレーション(振動波)を私達が出しているかによっても決まってくるのです。それぞれの生き物は自らのバイブレーションを、自分でコントロールしているのです。
完全に拡張した生き物は「スペース」、つまり空間状態となります。拡張しているとどこにでも浸透できますから、私達は他の拡張している生き物と同じスペースに存在することができます。実際、宇宙にあるすべてのものが一つのスペースになることも可能なのです。
このひろがりを私達は意識の広がり、理解の深化、あるいは魂の広がり等として体験しますが、その体験をどう呼ぶかは、各人の自由です。完全に広がりきった時、私達は完全な意識の拡大、つまり、すべてのものと一体となった感覚を体験します。そのレベルに達すると、他のどんなバイブレーションにも、他の個体のどのような行動にも、まったく抵抗しなくなります。時間を超えた至福感、感覚の無限の広がりを味わうのです。
この状態を「スペース」と表現しますが、このスペースは私達のだれもが到達できる体験なのです。ただ、この地上において、その状態を正確に説明することは難しいのです。なぜなら、この感覚は無限だからです。「スペース」と定義した瞬間、それは限界のあるものになってしまうからです。また、次のように説明してもよいのかもしれません。すべてと一体化した魂は、あらゆることを体験することができます。そして、すべてと一体化した魂とは、無限に広がった状態にいる時の私達のことなのです。【『なまけ者のさとり方』タデウス・ゴラス:山川紘矢〈やまかわ・こうや〉、亜希子〈あきこ〉訳(地涌社、1988年/PHP文庫、2004年/増補改訂新版、2014年/原書、1971年)】
E=mc²とは、エネルギー=質量×光速度²で、エネルギーと質量の等価性を示した式だ(特殊相対性理論)。ここに無理矢理当てはめてみると、「スペース」とは個人やグループが放つ光が及ぶ範囲(空間)と考えてよかろう。
例えば合唱や楽器演奏、集団で行うダンス、チームで行う球技、恋愛から会話に至るまで、何らかの一体感を経験したことは誰しもあることだろう。このような「自分を超えた一体感」をスペースが拡大した状態と見なせる。
「拡張することと収縮すること」とは絶妙な表現だ。私は直ぐさま呼吸のヴィパッサナー瞑想を思い出した。呼吸を「膨(ふく)らみ」「縮み」と見つめる瞑想法である。
では意識はどうだろうか? 意識の拡張や収縮を普段自覚することはない。エゴに取り憑かれた意識は収縮していることだろう。拡張した意識は全方位への注意として働くことだろう。
意識は簡単に飛ぶことができる。好きな映画や小説、漫画などにハマり込んでいる時、我々は現実から遠ざかる。
つまり、意識とは焦点と言い換えることができよう。何に焦点を当てるかで世界像は全く違ってくるし、見えるものはもとより見えないものが異なってくるのだ。
「意識のハード・プロブレム」はいまだに解決してない。意識がわからないのだから、変性意識もわからないと考えてよい。
ただ確実なのは「意識がある」という自覚を我々が持っていることだ。
「今ここ」に意識を向けて、魂を開けるかどうか。悟りの鍵はそこにある。
