古本屋の殴り書き

書評と雑文

死後、38年を経て出版された日記/『エロスと神と収容所 エティの日記』エティ・ヒレスム

『〈私〉だけの神 平和と暴力のはざまにある宗教』ウルリッヒ・ベック

 ・死後、38年を経て出版された日記

・『生きることの意味を求めて エティの手紙』エティ・ヒレスム

 ここに訳出した『エロスと神と収容所――エティの日記』は、アンネの日記にさきだつ1941年3月9日から1942年10月13日まで、ウェステルボルク中継収容所からの手紙を含めると1943年8月24日まで、約2年余にわたっている。この日記を書きはじめたときエティはすでに27歳の自立した女性で、女性としても人間としても円熟した性向を見せている。したがって、アンネが苦難の時代に生きた10代の少女の心の記録とすれば、エティの日記は高度な知性と深い理解力、生に対する熾烈な欲求をもった20代の女性が、この苦悩をどう受けとめたかをいきいきと語る、貴重な文献と言えよう。「編者の序」にも記されているように、この日記がオランダで出版されたのは彼女の死後実に38年経ってからだが、出版されるやたちまち版を重ね、現在では数カ国語に訳されているという。(はしがき)

【『エロスと神と収容所 エティの日記』エティ・ヒレスム:大社淑子〈おおこそ・よしこ〉訳(朝日選書、1986年/原書、1981年)】

アンネの日記』は「1942年6月12日から1944年8月1日まで記録されている」(Wikipedia)。

 悟りのきらめきを探すつもりだったのだが当てが外れた。ウルリッヒ・ベックの切り取り方が巧みであったのか。エティ・ヒレスムは迫害の中で外なる神を内側に見出した稀有な魂の持ち主である。