古本屋の殴り書き

書評と雑文

レバレッジ/『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン

『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー
『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ
・『ジャック・マー アリババの経営哲学張燕
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
ナヴァル・ラヴィカント「幸福の選択とは何なのか」

 ・カネではなく富を求めよ
 ・レバレッジ

・『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽
『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子

必読書 その三

 時間を切り売りしていてはリッチになれない。経済的自由を得るには、エクイティ――事業の一部――を所有せよ。


【『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン:櫻井祐子〈さくらい・ゆうこ〉訳(サンマーク出版、2022年/原書、2020年)以下同】

 会計では資産=アセット、エクイティ=株主資本となる。資産・資本を表す英語にキャピタルもあるが、キャピタル・アセット=固定資産である。つまりここでいうエクイティとは株式と理解していいだろう。もちろん株トレードで儲けろという意味ではない。

 インターネットはキャリアの可能性をとてつもなく広げた。ほとんどの人はまだそのことに気づいていない。

 私も気づいていない。

「同じゲーム」を何度もくり返せ。富であれ人間関係であれ知識であれ、人生の見返りはすべて複利で殖(ふ)える。

 含蓄に富む言葉が次々と出てくる。

 皮肉屋や厭世家とは組むな。彼らの思いは現実になる。

 世の中を見つめる眼差しは、人や物事に対しても変わることがない。

「特殊知識」「説明責任」「レバレッジ」を武器にせよ。

 レバレッジとは梃子(てこ)の作用である。「経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること、または、その高まる倍率」(Wikipedia)。ま、簡単にいえば借金のことだ。株式売買の信用取引やFX・先物・CFDなどは、証拠金を担保にして自己資本以上の取引が可能だ。

 資本主義経済では与信の差が利益の差となりやすい。当たり前だ。資本主義という以上、より資本のある者が有利なゲームとなる。与信で問われるのは「返済能力(Capacity)」「返済資質(Character)」「返済担保(Capital)」の三つで3Cともいわれる。返済脂質は過去の実績と考えてよい。すなわち、借金を繰り返し、より大きな金額を借り入れできる者に優位性がある。

 説明責任を引き受け、君の名のもとに事業リスクを取れ。社会はその見返りとして、君に責任、エクイティ、レバレッジを与えてくれる。

 カネを借りる以上は、「これを行えば必ず利益が出る」という説明が必要だ。

 レバレッジなくして富はない。事業にレバレッジをもたらすのは、資本、人、そして限界費用ゼロで複製できるプロダクト(コードとメディア)だ。

 人々が有機的につながる状態を「組織」という。そこではマンパワーが足し算ではなく掛け算の効果が表れる。

 資本とは、カネだ。カネを集めるには、説明責任をもって特殊知識を活用し、優れた判断を示せ。

 特殊知識とは、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(『論語』)で、自分が好きで好きで仕方がない分野の知識である。これは、誰もが持っているという前提で考えるべきだ。どんな小さなことでも構わない。それをやっている時は時間が経つのを忘れてしまう、という行為が自分の武器となる。

 資本と労働力は、許可型のレバレッジだ。資本を得るには、誰かに与えてもらう必要がある。労働力を得るには、誰かに従ってもらう必要がある。

 それに対して、

 コードとメディアは、非許可型(パーミッションレス)のレバレッジだ。これが、新興の富裕層を支えているレバレッジだ。ソフトウェアやメディアをつくって、君が寝ている間も働かせよ。

 プログラミングと情報のアウトプットである。

 君が自由に利用できるロボット団がある――熱効率と空間効率のためにデータセンターに詰め込まれている。コードを書いてこれを使え。

 私は生まれて初めて、「もう少し若かったら……」と思った。ま、自分でできないなら、アウトソーシングすればいいだけなんだけどね。

 要約:自分をプロダクト化せよ。

 プロダクトとは製品のこと。すなわち、自分自身を「売れる状態」にせよという意味合いだろう。

 ナヴァル・ラヴィカントが説く「レバレッジ複利」には全く新しい視点がある。文章の至る所に人々をそして世界を豊かにしようとする彼の壮大な理想が滲み出ている。

大豆毒

 体に悪いからこそ納豆という発酵食品にして食べていたのだろう。私の食に対する基本的な考え方は極めて簡単なもので、「狩猟採集や漁撈(ぎょろう)の時代に毎日食べることができたかどうか?」だけである。人類は雑食で進化してきた。それゆえ雑食が正しい。

カネではなく富を求めよ/『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン

『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー
『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ
・『ジャック・マー アリババの経営哲学張燕
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
ナヴァル・ラヴィカント「幸福の選択とは何なのか」

 ・カネではなく富を求めよ
 ・レバレッジ

・『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽
『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子

必読書 その三

 金儲けは「する」ものではない――身につけるスキルだ。


【『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン:櫻井祐子〈さくらい・ゆうこ〉訳(サンマーク出版、2022年/原書、2020年)以下同】

 本書は公益に資する目的で制作された。PDF版は無料でダウンロードできる。ナヴァル・ラヴィカントは一切利益を得ていない。内容はナヴァル・ラヴィカントが共有した投稿記事、ツイート、対談で構成されている。ナヴァル・ラヴィカントは1974年インド・デリー生まれ。9歳でニューヨークへ移住。25歳で起業をした。44歳で「年間最優秀エンジェル投資家」に選出される。現在、個人投資家として約200社に投資し、いくつかの企業の相談役を務めている。

 現代人の脳は資本主義で汚染されているため対価を支払って読むのが正しい。身銭を切ることで意識のスイッチが入るためだ。ま、悲しい現実ではあるが。

 金儲けがスキル(技能)であれば誰もが学べる。では、早速学んでいこう。

 カネではなく、地位でもなく、富を求めよ。富とは、君が寝ている間も稼いでくれる資産だ。カネとは、時間と富を人に与えるための手段だ。地位とは、社会階層内での君の立ち位置だ。

労働収入と権利収入/『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター

 地位を得れば周りの人間がペコペコしてくれる。それだけのことだ。具体的な価値はさほどない。

「地位のゲーム」をする人は無視せよ。彼らは「富の創造ゲーム」をする人を攻撃して地位を得ている。

 例えばリクルート事件(1988年)で逮捕された江副浩正、あるいはライブドア事件(2004年)で逮捕された堀江貴文などが思い浮かぶ。出る杭は打たれるという日本社会の典型的な事件であった。個人的にはどちらの事件も冤罪であると考えている。

 テレビや新聞で彼らを悪し様に罵った連中が「地位のゲーム」をする人である。

 問題は、地位のゲームで勝つためには、誰かを蹴落とす必要があることなんだ。
 だからこそ、【君の人生では地位のゲームを避けなくてはならない――怒りに満ちた闘争的な人間になってしまうからだ】。誰かを蹴落として、自分や自分に似た誰かを持ち上げるために、君はいつまでも戦いつづけるはめになる。

 本質を言い当てている。

 くだらないゲームは賞品もくだらない。

 地位を失えば空虚な人間ばかりだ。実業家の足を引っ張る虚業家に騙されてはいけない。

 ナヴァル・ラヴィカントが説く「富」とはエクイティを意味する。具体的には「事業の一部」を所有することであり、起業と株式保有を勧める。

 インドはブッダクリシュナムルティを生んだ国である。ナヴァル・ラヴィカントはビジネスマンでありながら、思想家と目されている人物で、シリコンバレーに大きな影響を与えている。ただの天才でもなければ、ただのリベラリストでもない。次の時代の扉を押し広げていることが言葉の端々から伝わってくる。

よいデザインはトレイルに似ている/『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア

『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット

 ・道の本質はその機能にある
 ・長距離ハイキング
 ・よいデザインはトレイルに似ている

『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー
・『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『「体幹」ウォーキング』金哲彦
『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『表の体育・裏の体育』甲野善紀
『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎
『ナンバの身体論 体が喜ぶ動きを探求する』矢野龍彦、金田伸夫、長谷川智、古谷一郎
『ナンバ式!元気生活 疲れをしらない生活術』矢野龍彦、長谷川智
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
・『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

身体革命
必読書リスト その五

 山のなかで半年近くを過ごしたあとでは、都市は驚異であり、奇怪だった。徹底して人間の手で変形させられているという意味で、これ以上の場所はあまりない。いちばん衝撃を受けたのは、その硬直性だった。直線と直角、舗装道路、コンクリートの壁、鉄の梁、そして政府が定めた厳格な規則。廃棄物があふれ、あらゆるものが壊れている。わたしはトレイルから、年を経た道具や古典的な民間説話のように、よいデザインはトレイルに似ていることを学んでいた。それは効率性と柔軟性、耐久性のバランスをとることによって人々の共通の欲求を満たす。滑らかだが強さがある。曲るけれども、折れない。それと比較すると、人間の構築したもののかなり多くが、恐ろしいまでに優美さを欠いていた。


【『トレイルズ 「道」を歩くことの哲学』ロバート・ムーア:岩崎晋也〈いわさき・しんや〉訳(エイアンドエフ、2018年)】

 トレイルとは「森林や原野、里山などにある『歩くための道』のこと」(トレイルとは|環境省_みちのく潮風トレイル)。

 森林や原野には障害物がある。そして山には勾配(こうばい)がある。つまりトレイルとは「最短化」ではなく「最適化」なのだ。体力と地形をバランスした軌道は川のように緩やかなカーブを描く。川には意志がない。それでも位置エネルギーと重力がバランスして海を目指すのだ。

 美術や造形にも詳しい武田邦彦は、「天井と壁の直角が人間にストレスを与えている」と何度も語っている。やはり洞窟のように自然な形が望ましいのだろう。キャンパーにテントの寝心地を訊いてみたいものである。

 日本の美術はシンメトリー(左右対称)に重きを置かない。呑み口の歪んだ茶碗など。

陶芸作品 | 左右非対称の美しさ

 人体に直線が存在しない以上、歪みがあった方がしっくりくる。

 義務教育も都市と似ている。人間の定規を当てて成形するところが。たぶん工業製品の生産と似た感覚で行われているのだろう。

ゲイツ財団が世界中のデジタルIDプロジェクトを推進