古本屋の殴り書き

書評と雑文

インデックス投資の落とし穴/『お金は寝かせて増やしなさい』水瀬ケンイチ

『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ』橘玲
『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』藤沢数希

 ・インデックス投資の落とし穴

 ある日曜日。仕事と投資で疲れた頭をかかえて途方にくれていた私は、図書館に立ち寄りました。そこで、手に取った本を1ページ読んで、私は雷に打たれたような気がしました。そこにはこう書かれていたのです。

個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックスファンドを買ってじっと待っている方がはるかによい結果を生む」

 ……それってお金を寝かせておくだけでいいってこと?
 最初、よくあるトンデモ本ではないかと警戒しました。しかし、よくよく調べてみると、1973年に初版が出版されてから30年経ち(当時)、改訂を重ねながら世界中で読み継がれる超ロングセラーだったのです。
 まさに「時の洗礼」を受けてきた名著であるということがわかりました。
 しかも、この本の主張は、国内外の学者たちによるさまざまな研究で実績が証明されており、プロの間ではよく知られた事実であることまでわかってきました。
 いつも投資のことが頭から離れず、仕事も中途半端になっていた私は、「これしかない!」と思ったのです。のちに私を投資の悩みから解放し、人生を大きく変えることになった、その本のタイトルは『ウォール街のランダム・ウォーカー』。

 こんにちは、私は水瀬ケンイチといいます。
 仕事のかたわら、零細個人投資家として15年前に出会った「インデックス投資」という投資法を実践しています。その実践記を「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」というブログで公開しています。ありがたいことに、そのブログが皆さまにご好評をいただき、こうして本を執筆する機会をいただきました。

【『お金は寝かせて増やしなさい』水瀬ケンイチ(フォレスト出版、2017年)】

 昨日、以下のツイートを見かけた。

 察するところ、米株のインデックス投資を推奨してきた厚切りジェイソンに対して、様々な苦情・文句・中傷が寄せられたのだろう。NYダウは史上最高値を更新し続け、37000ドル直近で反落して今週は31000ドル台まで値を下げた。ナスダックとS&P500は昨年から下げ基調である。

「卵は一つのカゴに盛るな」という相場格言がある。分散投資を勧めた言葉だ。一つの銘柄に軍資金を注ぎ込めば、カゴを落として卵を全部割ってしまう可能性がある。これを極限まで推し進めたのがインデックス投資である。日本の場合だと日経225銘柄を平均的に買うイメージだ。定期的に買い増してゆくことでコストも平準化される(ドル・コスト平均法)。

 インデックス投資のリターンはプロのファンドマネージャーヘッジファンドの平均値よりも高い。しかも、かなり高いのだ。長期投資の強味といっていいだろう。現在であれば指数の先物やCFDもある。

 なぜインデックス投資は利益を出せるのか? それは各国政府が緩やかなインフレ政策を志向するためである。また、マネーという代物には金利がつく。金融政策を無視すれば経済規模は必ず金利分だけ拡大してゆく。あるいは創造された付加価値分だけ売り上げは増えてゆく。あらゆる物が時間の経過とともに腐敗、減退してゆく中でマネーだけは増殖する(『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」河邑厚徳、グループ現代)。

 しかしながら、ある前提が必要となる。「基軸通貨体制の資本主義下では」との前提が。ここにインデックス投資の落とし穴がある。ドル基軸体制の崩壊(『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ)、あるいは資本主義の終焉(『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫)が現実になれば、どういう事態が待ち受けているか想像がつかない。個人的にはドルが失墜し、新たな基軸通貨体制に移り変わると考えている。IMF国際通貨基金)の特別引き出し権(SDR)と新しいデジタル通貨をペッグするようなシステムが作られるのではないか。

 私の予想が当たれば、インデックス投資は「売り」で臨むのが正しい。資本主義というブル相場の転換点に差し掛かっているとすれば、正真正銘の大恐慌が訪れても決しておかしくない。しかもベア相場はスピードが速い。

 今日こんなツイートを見た。

 関連ツイートを紹介する。

 日本人はお上に依存する体質が強いせいか、自己責任という概念がいまだに定着していない。4000万円を溶かしたのは確かに悲劇だが、追証(おいしょう)をくらわなかったのは不幸中の幸いである。これが先物相場だったら首を括る羽目になったかもしれないのだ。

 政府が悪い、会社が悪い、誰かが悪いと言い募ったところで世の中が変わることはない。日本が嫌なら海外へ移住すればいいし、会社がどうしようもなければ起業をすればいいだけのことだ。誰かが何かをしてくれるのを待っているだけでは、生きてる甲斐がない。