古本屋の殴り書き

書評と雑文

ブリテンズ・ゴット・タレントから2曲

 最初の曲は小学校教師が歌うメッセージソング。ユーモアと皮肉の向こうに不思議な哀感と静かな希望が見える。歌詞の力が語り口調を自然なものとしている。曲ありきで言葉を連打するラップとは異質で、聴衆の心へ真っ直ぐに言葉が染み渡る。驚くべきは彼女の表情の豊かさである。これほど魅了される表情はMelissa Villasenor以来か。

 2曲目は賛美歌と思われるが、ただ美しいだけでなく、大人になりかけた少年の不安定さが類い稀なビブラートを生んでいる。何にも増して音楽と自分の声に対する強い信頼感が伝わってくる。「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(『論語』)である。