・PSSワールド・メディカル社では部下が上司をクビにできる
・ビジネス
医療用品の流通を手がけるPSSワールド・メディカルは、わずか15年で売上高およそ20億ドル、社員数4500人へと拡大した。これほどの急成長が実現したのは、1.社の方針についてのマニュアルやメモはいっさい排除する、2.財務の詳細を全社員に知らせる、3.部下が上司をクビにできる、といった明確な方針を掲げたことによる。
【『隠れた人材価値 高業績を続ける組織の秘密』チャールズ・オライリー、ジェフリー・フェファー:長谷川喜一郎〈はせがわ・きいちろう〉監修・解説:広田里子〈ひろた・さとこ〉、有賀裕子〈あるが・ゆうこ〉訳(翔泳社、2002年)】
統治形態には王政、貴族政、民主政がある(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。これを意思決定の形態と考えてみよう。
王政=1人、貴族政=少数、民主政=多数となる。私は予(かね)てから貴族政を支持してきたのだが、大東亜戦争がエリート主義で敗れた歴史を知ると、エリートのあり方については再考せざるを得ない。現代においてもエリートが官僚となっているが、バブル経済崩壊(1991年)以降、日本という国家が上手く走ってきたとはとても言えない。
最初に民主政を考えた人々は地方レベルの単位を想定した。そう考えると会社にはうってつけだろう。しかしながら企業版民主政ともいううべき株式会社は形骸化しており、株主総会ですら単なる儀式と化している。
往々にして上司は部下の仕事ぶりを知らない。ピラミッド型組織では上意下達(じょういかたつ)のメカニズムが働くため、指示や命令が遂行される現場にいるのは部下の配下であり、被害と恩恵を被るのも彼らだ。つまり、ある役職の能力を最もよく知る人物は彼の下(もと)で働く人々だ。
その意味で「部下が上司をクビにできる」のは目の付け所がよい。むしろ、今までなぜ誰も気づかなかったのかと思うほどだ。ただし、これを単なる感情で行うと人気投票で終わってしまう。
1についても同様で、概念やコンセプトを完全に理解させるためなのだろう。書類主義は無責任を助長する。何らかのエラーがあった際に「書類に書いてある」で済ませてしまうようになる。更に書類はコミュニケーションを乏しくする。そして書類仕事はエントロピー増大の法則よろしく必ず増え続ける。「書類の書き方を教える書類」まで作る羽目となることは決して珍しくない。
組織を改革するためには意思決定のあり方を変えるのが一番手っ取り早い。