古本屋の殴り書き

書評と雑文

目撃された人々 75

目撃された人々

 女友達から電話があった。「話を聞いて欲しいんだけど……」
「ああ、いいよ」と応じた。
 2~3分ほど要領を得ない話が続いた。私は矢継ぎ早に質問をし、「問題はこうで、解決するためにはこうするんだな」と告げた。
「あのさー、私はただ聞いて欲しかっただけなんどけど」
 間髪を入れず、「おめーの話は聞いてられないんだよ」と答えた。
「あんたさ――」。まあ怒ること、怒ること。更年期障害もあって彼女の怒りの炎があたり一帯を焼き尽くした。

 数日後、「○○ちゃんの愚痴を聞きたい気分なんですけど♪」と電話をしたら、「あんたにはもう絶対何も言わない」と来た。私は胸を撫で下ろした。人生の無駄な時間が割愛できたので(笑)。

 傷つきやすい彼女の愚痴が何に由来するかを私は知っていた。尊敬する母親が中年期から不幸を強いられた。彼女は尊敬するあまり母親の不幸をもトレースしているのだ。日常生活の中でひょいと希死念慮が頭をもたげることもあった。「許せない何か」がお前の心を苦しめているんだよ。いつか、そう話すつもりだ。

 彼女は今も定期的なうつ症状に苦しんでいる。時々LINEのメッセージが来るが、病気のお知らせばかりである。私からはいつも「死ぬなよ」と送信している。