古本屋の殴り書き

書評と雑文

認識のフレームを転換するメソッド/『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル

『ものぐさ精神分析』岸田秀
『続 ものぐさ精神分析』岸田秀
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『生きる技法』安冨歩
『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳
『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには 論理療法のすすめ』アルバート・エリス
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』岸見一郎、古賀史健
『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃
『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル

『NLPフレーム・チェンジ 視点が変わる〈リフレーミング〉7つの技術』L・マイケル・ホール、ボビー・G・ボーデンハマー
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり
『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗
『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司、由佐美加子
『ザ・メンタルモデル ワークブック 自分を「観る」から始まる生きやすさへのパラダイムシフト』由佐美加子、中村伸也
『過去にも未来にもとらわれない生き方 スピリチュアルな目覚めが「自分」を解放する』ステファン・ボディアン

 ・バイロン・ケイティは現代のアルハットである
 ・認識のフレームを転換するメソッド

『人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ
『ブッダの教え一日一話 今を生きる366の智慧』アルボムッレ・スマナサーラ
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『気づきの視点に立ってみたらどうなるんだろう? ダイレクトパスの基本と対話』グレッグ・グッド
『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール
『ニュー・アース』エックハルト・トール
『覚醒の炎 プンジャジの教え』デーヴィッド・ゴッドマン
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ

虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
悟りとは
必読書リスト その五

 入所(※摂食障害の女性が入る療養施設)から1週間ばかりたった日の朝、自分はベッドに寝る価値すらないと思い、床に横たわっていたケイティは、目を覚ましたとき、「私」という考えがまったく消え失せているのに気づきました。

 すべての怒りや悩み、「私の世界」、そして全世界が消え、その瞬間、心の奥底から笑いが込み上げてきました。従来の自分の知覚で認識できるものが何もありませんでした。まるで、自分ではない他の何かが目覚めたように。そしてその「何か」が目を開け、ケイティの目を通してものごとを見ているんです。「それ」は喜びにあふれていました。自分と分離しているものや、受け入れられないものが何もないのです。全てが、ただありのままの姿で存在していました。

 ケイティが自宅に戻ったとき、家族や友人たちは、別人になった彼女に気づきました。(「はじめに」スティーヴン・ミッチェル)

【『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル:ティム・マクリーン、高岡よし子監訳、神田房枝訳(ダイヤモンド社、2011年/アーティストハウスパブリッシャーズ、2003年、安藤由紀子訳『人生を変える4つの質問』新訳改題)】

 再読。1986年2月のある朝の出来事である。バイロン・ケイティは重度のうつ病で入院していた。スティーヴン・ミッチェルは夫君である。驚くべき事実だが、「悟りは修行と無関係である」。これは他の悟り本を読んでも同様である。悟りは【突然開ける】。あるいは【舞い降りてくる】。

 悟りには段階がある(『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃)とされているが、預流果(よるか)であっても「諸法無我」を覚知している。悟っていない私からすれば十分な悟りである。

 そして「悟り」は目に見える変容をもたらす。

ケイティ●――【その考えが本当であると、絶対言いきれますか?】

エリザベス●いいえ。

ケイティ●【そう考えるとき(「息子さんの家族があなたを誘ったら、あなたを受け入れる」と考えるとき)、あなたはどのように反応しますか?】

 1行目を読んだ瞬間、私の頭に電球が灯った。「認識のフレームを転換すること」が悟りなのだ。それはそのまま世界の構造を引っくり返すことでもある。思わず膝を100回ほど叩いた(ウソ)。

 ケイティは「【偽りの考え】【混乱した考え】を信じ込むと、真実から遠ざかる」と繰り返し注意を促す。人間は「考える葦」(パスカル)である。葦は風に揺れる。同じく人の頭の中でも「思考の風」がやむことはない。つまり、「思考という反応」こそが不幸の原因なのだ。パスカルの『パンセ』(1670年刊)は思考を意味するフランス語である。それ以前に近代哲学の祖デカルトが「我思う、ゆえに我あり」(『方法序説』1637年刊)と宣言していた。

「神」とは人間の自我意識を示した言葉だと私は考えている。西洋の近代において「思考」という翼が与えられた。彼らは思考を駆使して帝国主義の版図を広げたのだろう。「発見の時代」(Age of Discovery/大航海時代)は虐殺・略奪・奴隷を通して資本主義を築いた。銀行システムによるマネー社会が現れるのも同時期のことである。

 21世紀は欧州白人の価値観が崩壊する時代であると密かに期待している。彼らが目論むグレート・リセットは想定通りの戦争に至り、予想外の混乱を招くことだろう。なぜなら、思考こそが人類を不幸にする元凶であるからだ。

 グローバリズムとは全く異なる静かな潮流が見え始めている。政治や経済だけが人々の運命を決めるわけではない。人類が幸福を望めば、それは必ず実現されることだろう。