・時は金なり
これは佳作である。エコノミストのエミン・ユルマズさんが推していたので見た。
25歳になると余生のタイムリミットは1年となる。富裕層は永遠に生きられる。時間が通貨として機能する世界を描く。
コーヒーの料金も時間で支払う。ローンの支払いからバス代に至るまで時間で支払われる。スラムでは1ヶ月以上の時間を持つ者は狙われる。腕のデジタル表示は緑色で、死ぬと黒くなる。時間監視局(タイムキーパー)は時間を押収し、身柄を拘束する。
古めかしい工場や古めかしいクルマがどことなく『マトリックス』を思わせる。
主人公の男はある富裕層を助ける。男は語った。「少数が不死でいるため、多くが死ぬ」と。
「なぜスラムでは、税金と物価が同時に上がる? 確実に人が死ぬようにだ。少数が百万年の命を得るために」
「もし僕に――
長い時間があったら…
ムダにはしない」
彼は富者から116年39週間を譲り受けた。親友に時間を分け与え、それからカジノへ趣き、残り時間を1100年にまで伸ばした。
富裕層の娘が言う。「“時”は誰にとっても苦痛よ。貧者には死、富者には倦怠」。
「みんな、どう生きているの?」
「睡眠を減らす」
主人公は革命家であった。彼は富裕層から時間を奪い、貧者に分け与える。ここから映画はボニー&クライド(『俺たちに明日はない』)と化す。
「時間がたくさんあったら――
本当に人に与える?」
「僕はいつも1日だけ。どれほど必要だ? 周りで人が死んでいくのに」
この科白(せりふ)を聞くだけでも映画を見る価値がある。
「人は不死であってはならない。そのために誰か死ぬなら」
左翼の安易な革命思想に共感はできないが、フェア(公正)の精神はアメリカの骨格を成すものだ。
山の手を表す「ニューグリニッチ」という言葉が気になった。「ニューグリニッジ」とすべきではなかったか(Greenwichの発音記号と読み方: 英語の発音インフォ)。