・『マトリックス・レボリューションズ』ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー監督
・20世紀の区切りをつけた傑作
・『シミュラークルとシミュレーション』ジャン・ボードリヤール
amazonプライムの契約が来月で切れるため、『マトリックス』三部作を一気に視聴した。やはり名作である。斬新な映像も示唆に富んだ脚本も素晴らしい。
ネオは「白ウサギについて行け」との指示に従い、選択を迫られた結果「赤い薬」を飲む。幸不幸よりも真実を知るのが人間の本能なのだろう。
マトリックスは仮想空間だ。そこでは人間が培養、栽培されている。
マトリックスのマシーンがやっていた「人間を生体バッテリーとして利用する」が子供の頃から意味不明だったんだけど
— えいす (@nijieith) December 21, 2021
元々の設定は「人間の脳を生体ニューラルネットワークとして利用する」だったのが、観客には理解しにくいよねって変えたらしい
作品の根幹になる部分で妥協しちゃってる気がする・・・
「人間をマトリックスという夢の世界に繋ぎ止めて、マシーンは人間から活動エネルギーを採取しているのだ」
— えいす (@nijieith) December 21, 2021
子供ワイ「マトリックスを動かすエネルギーで活動しろやあああああああ」
約四半世紀前に作られたことを思えば「AI」というキーワードも出てきて驚いた。
「(スプーンを)曲げようと思ったら曲がらないよ。そうじゃなくて、真実を見ようとしなきゃ」
「真実?」
「スプーンはないんだ。曲げるのはスプーンじゃなくて自分自身だよ」
仮想空間で子供がネオに告げる科白(せりふ)には、世界と自分の関係をありありと悟る秘密が明かされている。スプーン=世界である。我々は「外なる現実」を存在として認識するが、実際にあるのは「自分の認識」だけである。世界➡認識➡解釈という構図が脳のシステムであり、業(ごう)ともいえる。悟りとは、世界を見つめる自分を、もう一段上のメタレベルから見下ろす営みであろう。更に「洞窟の比喩」であれば影に該当するマトリックス世界を現実的に描くことで妄想の強さを示している。
この作品にはキリスト教のメタファーが至るところに埋め込まれており、ネーミングセンスが秀逸である。
・預言者
・抵抗運動(レジスタンス)
・ネオ➡救世主 The Oneのアナグラム(The one の意味と使い方。You are the one ってどういう意味? | 初心者英会話ステーション)
・ザイオン➡シオン
・ロングコート➡修道士
・機械の古めかしさ➡近代
・トリニティ➡三位一体
・モーフィアス➡ギリシャ神話の夢の神
・薄汚れて穴だらけのセーター➡ピルグリム・ファーザーズ
・設計者(アーキテクチャー)➡神
・数えきれないセンティネル➡悪魔
ネオとトリニティのラストシーンは『狼 男たちの挽歌・最終章』のパクリだ。
「光り輝く世界」は悟りに共通したものだ。(『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 若き医師が死の直前まで綴った愛の手記』井村和清)。
その他、私が気づかなかった部分もたくさんある。
・『マトリックス』であなたが見落としているかもしれない17のディテール | Business Insider Japan
いずれにせよ、ギリシャ哲学のイデアを表現した稀有な作品で、20世紀末に大きなピリオドを打つほどの内容になっていると思う。