古本屋の殴り書き

書評と雑文

人類は太りすぎで死ぬ/『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』ロバート・H・ラスティグ

『砂糖の世界史』川北稔

 ・目次
 ・人類は太りすぎで死ぬ
 ・人種によって罹患率が7倍も違う

・『「お菓子中毒」を抜け出す方法 あの超加工食品があなたを蝕む』白澤卓二
・『砂糖をやめればうつにならない』生田哲
・『アレルギーは「砂糖」をやめればよくなる!』溝口徹
・『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』清水泰行
『血液型の科学 かかる病気、かからない病気』藤田紘一郎
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』デイミアン・トンプソン

必読書リスト その二

 20年前、肥満は社会的問題で、医学的問題ではなかった。

【『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』ロバート・H・ラスティグ:中里京子〈なかざと・きょうこ〉訳(ダイヤモンド社、2018年)以下同】

 社会問題から医学問題に替わるまでさほど時間を要さなかった。なぜなら肥満は低所得者層に顕著で、ファストフードが原因であることが直ぐにわかったためだ。

 ただし昨今は何でも医学の俎上(そじょう)に上げる傾向があるので要注意だ。

成人病が生活習慣病に変わった理由/『武術と医術 人を活かすメソッド』甲野善紀、小池弘人

 肥満には遺伝子も一枚かんでいるらしい。どれほど脂肪が体につくと病気の兆候が出るかを調べた研究はいくつもあり、その結果は意外とは言わないまでも、驚くほどはっきりしている。
 白人ではBMI値が30前後になると代謝の問題が現れはじめる。だから疫学者たちはBMI30を肥満が始まる区切り点にしている。だが、アフリカ系アメリカ人BMI値が35前後にならないと、メタボによる心不全の兆候が表れない。一方、【アジア人ではBMI値25あたりで病気の兆候が表れはじめる】。
 平均的に言って、アフリカ系アメリカ人女性が重い体重のために何らかのネガティブな健康問題を抱えはじめる時点は、アジア人女性より約12キロ重くなった時点だ(その中身の半分は脂肪で、半分は筋肉)。

「現れる」と「表れる」の違いとは?場面別での使い方と例文を紹介 | TRANS.Biz

BMI(ボディ・マス・インデックス=体重指数)を鵜呑みにする必要はない。ま、星座占いや血液型占い程度の認識でよろしい。

 私の場合、24.7なので辛うじて肥満を避けている。だが実際は肥満である。上京した23歳の頃はウエストが76cmであったが、40代で92cmにまで成長し、現在は85cm前後である。当然、腹筋の段差は見えない。

 BMIを編み出したのはベルギーの数学者である(1835年)。平均的な男性の算出を目的としており健康や医療とは関係がなかった。1972年頃から医学論文にこの式が引用されるようになる。ところがそれ以前に保険会社の統計担当者が目をつけた(1945年)。「太り過ぎ」を「肥満」に操作することを思いついたのだ。肥満=健康リスクであるから、高い保険料を徴収できるというわけだ。

 普通に考えても直ぐにわかる。筋肉と脂肪の割合が一緒くたにされているのだ。

 同じBMIでもこれほど違うのだ。筋骨隆々のアスリートは全員肥満に該当してしまう。

 人類は脂肪を蓄えることで進化してきた。脳もまた脂肪で作られている。食料が少なくなる冬や災害などをやり過ごすためには脂肪が必要不可欠であった。極端な状況を想像してみよう。今日、世界中の食物が失われてしまったとする。明日以降の予想は比較的容易である。痩せた人から死んでゆくのだ。生き残るのはデブだ。

 だが、実際は十分な食料がある。するとどうだ、デブは心臓疾患などで長生きすることが難しくなる。現在、肥満は炎症と考えられている(『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー)。やはり中道をゆくのが正しい。