古本屋の殴り書き

書評と雑文

川は世界最大の「ゼネコン」/『地形で解く すごい日本列島』おもしろ地理学会編

 ・川は世界最大の「ゼネコン」

『川と人類の文明史』 ローレンス・C・スミス

 川は大規模な「土木事業」をやってのけます。そのパワーは、世界最大の「ゼネコン」といってもいいでしょう。(中略)
 川が最大級のゼネコンだというのは、地形に及ぼす3つの力を持っているからです。「浸食」「運搬」「堆積」の3作用です。川は、地面を削り(浸食)、土砂を運び(運搬)、運んだ土砂を積もらせて(堆積)、地形を変えていくのです。
 まずは、川が「浸食」によって、地形をどのように変えていくか、見ていきましょう。
 その好例となるのが、東京都世田谷区にある「等々力(とどろき)渓谷」です。
 同渓谷は、23区唯一の自然渓谷で、東急大井町線等々力駅のそばにあって、高級住宅地を長さ約1キロにわたって貫いています。近隣の住宅地との標高差は約10メートルもあり、その上と下では気温が3~4度もちがいます。川の「浸食」する力は、東京都内にさえ、そのような渓谷をつくってしまうのです。
 同渓谷は、多摩地方から伸びている「国分寺崖線(がいせん)」の南端にあります。国分寺崖線は、多摩川武蔵野台地を削りとってできた段丘(だんきゅう/階段状の地形)であり、その段丘がさらに川の力によって浸食されて、刻まれたのが等々力渓谷なのです。


【『地形で解く すごい日本列島』おもしろ地理学会編(青春文庫、2022年)以下同】

 以前から気になっているのだが、河川工事はこうした川の作用を阻害しているのではあるまいか? 河川が地球の血管であるならば、自然に氾濫することを人類は容認すべきであり、川の近くに住むことは避けた方がよいと考える。特に川は海に近づくほど川幅が広がり、平地での被害が大きいことは容易に想像できるので、住宅建設の可否は厳しく行う必要があろう。

 八王子市は山間部と思いがちであるが、浅川は時折氾濫している。

浅川氾濫の歴史~高尾通信

 自然の摂理を人間の力で止めることは一時的には可能だろうが、長い目で見れば必ず手痛いしっぺ返しを食らうことだろう。

 なお、この本では、川が地面を削りとることは「浸食」と書き、それ以外の海(波)や風によって削りとられることは「侵食」と書くことにします。ただし、「河川侵食谷」は「侵食」と書くのが自然地理学の決まりです。

「侵食」「浸食」の意味と違い - 社会人の教科書

「浸」の訓読みは、「ひたす・ ひたる [外]つく・ つかる・ しみる」(goo漢字辞典)で、「おかす」はない。雨以外に使用するのはやや疑問である。