古本屋の殴り書き

書評と雑文

ぬか床マジック/『新版 ぬか床づくり 200年続く伝統の味と発酵の技』下田敏子

 今、私のライフ・ワークとして「ぬか床110番」、無料診断をやっています。

【『新版 ぬか床づくり 200年続く伝統の味と発酵の技』下田敏子〈しもだ・としこ〉(家の光協会、2022年/旧版『ぬか床づくり 母から子へ伝えたいスローフード』2008年)以下同】

 ぬか漬け本を数冊読んだ。本書が一番おすすめできる。100ページもない薄い本だが初心者~中級者には十分な内容と思われる。

「無料診断」という言葉が胸に刺さった。昨今はあらゆる知識や技能が「売り物」となっている。悟りですらそうなのだ。

 もちろん、「無料」の裏側には客をつかむ狙いもあることだろう。だが、そうした商売っ気よりも、母親の代役を務めようとする使命感の方が強い印象を受けた。

 材料の米ぬかにはビタミン類やミネラル類が方法に含まれていて、ぬか床に漬けることで野菜の中のビタミンB群は、生のときよりも5倍から10倍に増加します。

 これが、ぬか床マジックである。私がぬか漬けを始めたのもこれを知ったためだ。

 かたい野菜や、アクの強い野菜は、ゆでてから漬けます。沸騰した米のとぎ汁か、沸騰したお湯にぬかを入れたものでゆでると、野菜のえぐみやアクを抜きやすくなります。完全にゆであげてしまわず、固さが残るくらいまで半ゆでにし、冷水に浸して冷ましてからぬか床に漬けます。カボチャ、ゴボウ、ブロッコリー、ジャガイモ、新レンコン、タケノコ、フキ、カリフラワーなどがこのタイプです。

 冬に入っていたので熟成ぬかを買ったのだが、ま、簡単にはいかないね。大体、漬けすぎてしょっぱくなる。不味くはないのだが美味くもない。

 漬け時間は、夏はやわらかい野菜で6~7時間程度、ニンジンなどかたい野菜は24時間程度、冬はその2~3倍の時間がかかるので、だいたいの目安にしてください。

 キュウリ、大根が簡単でよい。

 流水で野菜についたぬか床を洗い流す。

 これは知らなかった。もったいないので、ぬかもそのまま食べていたよ。

 水分が多いかどうかを調べるには、熟成ぬか床を片手で1つかみ取って、ぎゅっと握ってみましょう。指と指の間から水分がにじみ出る感じならベストの状態です。それより多いようなら、たしぬかが必要です。

 たしぬかも既に用意してある。巻末の「ぬか床Q&A」がかゆところまで手が届いていて助かる。先日、少し遠い業務スーパーへ足を運んだところ、熟成ぬかが置いてあった。ブームはまだまだ去っていないようだ。