・アイディアに構成が負けている
・喜多川泰
『祇園四条(ぎおんしじょう)。祇園四条』
車内アナウンス。四条に着いて、何人かが降りようとする。
と、彼女は降りる人が通りやすいように体を動かし、移動する。それがとても上手で、かつ、まわりに細かく気を配っているのが伝わる振る舞いだった。
ああ、よく気がついて感じのいい子だな、と思った。頭もよさそうだ。【『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文〈ななつき・たかふみ〉 (宝島社文庫、2014年)】
守備範囲の広さを誇示しようと思って読んだ。一応読んだよ、最後まで。
アイディアはいいのだが構成が負けている感を受けた。これを認知症にまで結びつける程度の力技を見たかった、というのが本音である。
二人が付き合い始めてからのラブラブのやり取りがベタベタしていてセンスがない。多分、アイディアありきで書いたのだろう。種明かしまでが冗長で、ストーリーの浅さが見えてしまう。
ただし、未来を描いたラストシーンは巧みだ。