古本屋の殴り書き

書評と雑文

恐るべき悪文/『静けさの発見 二元性の葛藤を越えて』J・クリシュナムルティ

 ・恐るべき悪文

クリシュナムルティ著作リスト

 私たち自身に〔存在し〕、そのため世の中・世界に存在している混乱と悲惨を理解するには、私たちは初めに、自分たち自身の中に明晰さを見つけなければなりません。この明晰さは正しく考えることをとおして訪れます。この明晰さは組織化されるべきものではありません。というのは、それは他のものと交換できないからです。組織された集団の思考は危険になります――それがどんなに良く見えても、です。組織された集団の思考は、用いられ、利用〔・搾取〕されることがあります。集団の思考は、正しく考える〔という〕ことではなくなります。それはたんに反復的です。明晰さは本質的です。というのは、それなしには、変化と改善はたんにさらなる混乱につながるからです。明晰さは、言葉での主張の結果ではなく、強烈な自己〔について〕の気づきと正しく考えることとの〔結果〕です。

【『静けさの発見 二元性の葛藤を越えて』J・クリシュナムルティ:横山信英〈よこやま・のぶひで〉、藤仲孝司〈ふじなか・たかし〉、内藤晃〈ないとう・こう〉訳(UNIO、2013年/原書、1991年)】

 1945年5月27日~7月29日にカリフォルニアのオーハイ(オーク・グローブ)で行なわれた10の講話が収められている。

 上記は冒頭のテキストだが、とても読めた代物ではない。

 クリシュナムルティに関しては正確な翻訳よりも直観的な意訳が求められる。つまり、あるレベルの悟性が不可欠で、正確な翻訳は論理に傾いて悟性を失うことだろう。

 これほどの悪文はちょっと珍しい。