古本屋の殴り書き

書評と雑文

「今ここ」で捨てる/『「捨てる!」技術』辰巳渚

 ・大欲不足
 ・「今ここ」で捨てる

『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵
『コミック版 たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
・『たった1分で人生が変わる片づけの習慣 実践編』小松易
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぜんぶ、すてれば』中野善壽
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士

 それでも、これほどモノでいっぱいの暮らしにおいては、不用意に“仮に”置くのはじつに危険だ。モノを捨てられなくなるだけでなく、必要なものが必要なときに出てこないのは、この“仮に”のせいだといってもいい。
 ここは断固として“仮に”をやめ、“今”決めなければならない。仮に書類を紙の山の上に積もうとしたとき、その手を止める。仮に缶詰を食器棚の上に置こうとしたとき、その手を止める。仮に粗品のタオルを洋服だんすの空きスペースに押し込もうとしたとき、その手を止める。「ほんとうに、ここに置いていいの?」と考えてみる。

【『「捨てる!」技術』辰巳渚〈たつみ・なぎさ〉(宝島新書、2000年宝島社文庫、2003年新装・増補版、2005年/文庫改題『新「捨てる!」技術』宝島文庫、2021年)】

 直ぐに実践した。善は急げ、である。いいことは即座に行うのが信条だ。考える余地はない。特に役所からの通知はその場で開封し、捨てるものと保存するものを峻別する。重要なのは税の納付書だが、誤って捨てたとしても、どうせまた送ってくるから心配ない(笑)。大丈夫だ。奴等は支払が終わるまで送りつけてくるから。

「仮に」「取り敢えず」「後で」が落とし穴となる。先延ばしする癖が、「何でも後回し」を常態化するのだ。それは後々様々な病態となって結実する。

 もう一つは「考えない」ことである。捨てると決めたら潔く捨てる。持ち物が多いのは執着が強い性質を表している。つまり、持ち物が多ければ多いほど人は不幸なのだ。自我の欠けた部分を持ち物で補っているのである。その自覚に立てば、老境で目指すべきは無一物の状態だ。バッグ一つで好きな場所を漂泊するのが正しい日本人のあり方だと確信している。

【いつか使うかも、いつか必要なときがくるかも、いつか、いつか、と言っているうちに人生は終わるかもしれない。“いつか王子さまが迎えに来るかも”なんて夢見る少女には、“いつか”なんておそらくこない。そのままオバサンと化していくのだ。】

 結局のところ無駄な買い物を控えるということに尽きそうだ。特に百均は要注意だ。あるいはセールス、特売日、大安売りなど。買って損をすることはあっても、買わずに損することはない。

 私の場合、書籍が最大の問題だ。例えば100冊に限定する。新しい本を買ったら、古い本を1冊手放す。これを実践すれば本が増えることはない。中野善壽〈なかの・よしひさ〉は読み終えたら捨てるという。再読する場合は買い直すそうだ。