古本屋の殴り書き

書評と雑文

自分が生まれてきた目的/『“偽りの自分”からの脱出』梯谷幸司

『無意識はいつも正しい』クスドフトシ

 ・自分が生まれてきた目的

・『本当の自分に出会えば、病気は消えていく』梯谷幸司
・『なぜかうまくいく人のすごい無意識』梯谷幸司
・『無意識を鍛える』梯谷幸司
・『自分のままで突き抜ける無意識の法則』梯谷幸司
・『無意識のすごい見える化 「脳内の親」から解放されれば未来は思い通り!』梯谷幸司
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ』小池浩
・『借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんがあえて教えなかったとんでもないこの世のカラクリ』小池浩
・『科学的 潜在意識の書きかえ方』小森圭太
・『科学的 本当の望みを叶える「言葉」の使い方』小森圭太
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり

「あなたは幼い頃、どうしてあなた自身を父親に虐待させていたんですか?」
「は? されたくてさせてたわけじゃありません!」
「いやいや、そういう見方をしているからあなたは病気を続けているんです。もう一度聞きますよ。どうしてあなたは、幼い頃あなた自身を親に虐待させていたんですか?」
「……」
 このやりとりは、私のセッションルームで行なった、50代看護師さんとのやりとりです。

【『“偽りの自分”からの脱出』梯谷幸司〈はしがい・こうじ〉(幻冬舎、2018年)以下同】

 安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉著『生きる技法』を読んでおくと理解が深まる。

 梯谷幸司の軽い文体から勝手に若い人物を想像していたが、アクの強いオッサンで吃驚(びっくり)した(笑)。何となく文章に底意(そこい)が感じられて、あざとい印象を受ける。ちりばめられた自慢話に強い自我が垣間見えて、悟りとは無縁の人物だと判断できる。それでも尚、参考になる点は多い。

 私は、「つまりこういうことではないですか」と説明しました。
「父親に虐待され、母親からも見捨てられ、愛された感覚がいっさいなかった。そんなあなたの人生にとって、愛されない感覚というのはとても重要なのですよ。
 もし中途半端に愛されていたら、あなたの人生はダメになっていたでしょう。愛されることに依存してしまい、問題ばかり起こす人生で終わってしまう可能性もあった。
 人間というのは、愛を与える人か、愛を与えてもらう人に大別することができます。愛を与えてもらう側、もっと言えば愛を奪う側と言えるかもしれません。
 もし、あなたが中途半端に愛されていたら、“私は愛を与える側だ”ということを忘れてしまっていたのではないですか。あなたの今回の人生では愛を与える側だからこそ、子供を虐待するような病んだお父さんのもとに生まれ、病んだ男性ばかりいる病院で30年以上も看護師をしているのではないですか。あなたには、病んだ男性たちを癒していく役割があるのではないですか。愛を与える側だから児童擁護施設に惹かれるんですよね。あなたの今回の役割は、愛を与えてもらう側ではなく、愛を与える側なんだと思いません?」
 すると彼女は、うわあっと号泣し始めました。
 その1カ月半後、「がんが消えました」と彼女から報告がありました。

 この箇所を読んで私の中で何かが変わった。今までつながらなかったものが突然つながった。「そうだったのか……」と腑に落ちた。ま、個人的なことなので一々書かないけどさ(笑)。

 昨日、「誰もが『望んだ通り』の人生を歩んでいる」と書いた。もっと大袈裟に表現しよう。「誰もが自分が書いたシナリオ通りに生きている」と。

「それにしては、つまらない物語が多くはないか?」。確かに。真面目に頑張っている人は多いが、感動を語っている人は少ない。ほぼ、いない。絶滅危惧種だ。それでも、ふとした瞬間に思いと思いが交わることがある。交情が人生に彩りを添えるのだ。

 その意味から申せば、「厳しく生きる」人が少なくなってきたのだろう。仕事とか恋愛とかいった次元ではなく、もっと手前の位置にある「これだけは譲れない」「これ以上は許さない」との判断基準である。

 特に我々日本人にあっては惻隠の情が問われるべきで、「弱きを助け強きを挫く」姿勢こそが最も正しい。そう踏まえると、いじめ問題や特殊詐欺が日本文化を破壊していることに気づくだろう。

 過去を美化することが目的ではない。現在の自分自身が形成された背景を知り、その自分が果たすべき役割を自覚することが大切なのだ。全く同じ人生を歩んだ人は誰もいないのだから、自分の来し方はそのまま自分の個性として発揮できる。個性とは才能の異名だ。