古本屋の殴り書き

書評と雑文

無意識に任せる/『無意識はいつも正しい』クスドフトシ

 ・無意識に任せる

・『科学的 潜在意識の書きかえ方』小森圭太
・『“偽りの自分”からの脱出』梯谷幸司
・『本当の自分に出会えば、病気は消えていく』梯谷幸司
・『なぜかうまくいく人のすごい無意識』梯谷幸司
・『無意識を鍛える』梯谷幸司
・『自分のままで突き抜ける無意識の法則』梯谷幸司
・『無意識のすごい見える化 「脳内の親」から解放されれば未来は思い通り!』梯谷幸司
・『意思決定が9割よくなる 無意識の鍛え方茂木健一郎
『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami
『催眠ガール』大嶋信頼
『手にとるようにNLPがわかる本』加藤聖龍
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン

 そして、最終的に出た結論はこれでした。

「頑張りすぎていたんだな。
 もっともっと任せて良かったんだ」ということです。
 任せるとは潜在意識と呼ばれる【無意識】の部分にです。

 僕たちが頑張って状況を変えようとしていたことは、【無意識】にとっては邪魔をされていたに過ぎなかったのです。
 その手綱を緩めて、【無意識】に任せてみること。それが人生を幸せに過ごす鍵であり、願望を叶えたり、不安や悩みを解決するのに役立つのです。
 もしかしたら、この本を読んでるあなたも「頑張っているけどなんだかうまくいかない」と思っているかもしれません。【でも、今までうまく行かなかったのは、頑張る方向を間違えていただけ】です。

【『無意識はいつも正しい』クスドフトシ(ワニブックス、2015年)】

 梯谷幸司〈はしがい・こうじ〉著『無意識を鍛える』を読んでいるのだがあまりにも素晴らしい内容なので関連書を挙げておく。尚、梯谷本は既に2冊読んでいるが、これほど瞠目することはなかった。NLPの仕掛けが見事すぎる。

 20世紀に最も影響を与えた人物として挙げられるのは、アルベルト・アインシュタインチャールズ・ダーウィン、そしてジークムント・フロイトの3人だ。言い出しっぺはバートランド・ラッセルだったような気がする。東洋人からすると、「なぜフロイトが?」と思わざるを得ないが、西洋で無意識を発見したことの衝撃を物語っていると思う。インド哲学ではブッダ以前から説かれているのだが(笑)。

 意識は顕在意識と潜在意識に分かれる。ユングはその割合を顕在意識3%に対して潜在意識97%と考えた。文字通り氷山の一角というわけだ。

 当たり前のことだが「無意識を意識することはできない」。顕在意識は言葉が支配する世界である。とすると潜在意識は感情が起こる以前の世界と推察できる。

「無意識が正しい」ことは案外簡単に理解できる。例えばスポーツだ。ファインプレーは無意識で行われる。スポーツ選手がスランプに陥ると考えすぎて「言葉まみれ」になる。

 スポーツは狩猟をゲーム化したものだ。食物を確保するための戦略はもちろん必要だが、戦略がほぼ完全化された農業だと狩猟ほど感情の昂(たかぶ)りがない。それは繰り返しの動作が多いためだろう。劇的な要素が少ない。時間を要するため変化もわかりにくい。

 もう一つはコミュニケーションだ。良質なコミュニケーションはジャズの即興演奏(アドリブ)と同じで、その場限りの創造性=「今ここ」の実感を高める。ミュージシャンの歌や演奏が極まると完璧な聴衆の反応を引き出す。「今ここ」とはライブ感そのものだ。

 一方、会社内のコミュニケーションが上手くいかないのは、「上司が部下をコントロールする」という思い込みに支配されているためだ。意思の疎通に問題がある組織は必ず衰退してゆく。大東亜戦争を思え。陸軍と海軍が意思の疎通を行わず、天皇陛下と国民の意思が乖離(かいり)した時(二・二六事件)、既に敗北は決していたと思う。

 人間は政治的動物であるゆえ公平・公正に関する議論は必要だ。だがそこで言葉を過剰なまでに駆使してしまうと、97%の深層を見失うのだ。思弁に傾くと不幸になるのはヨーロッパが証明している。我々日本人は俳句・短歌で行こう。