古本屋の殴り書き

書評と雑文

不要なものをため込むと運気が巡らなくなる/『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami

『「捨てる!」技術』 辰巳渚
『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵
『コミック版 たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』小松易
・『たった1分で人生が変わる片づけの習慣 実践編』小松易
『人生を掃除する人しない人』桜井章一、鍵山秀三郎
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士

 ・不要なものをため込むと運気が巡らなくなる

『“偽りの自分”からの脱出』梯谷幸司
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ』小池浩
『科学的 本当の望みを叶える「言葉」の使い方』小森圭太

【顕在意識の中心は「論理的思考」です。】理論立てて考えたり、計算や分析をしたりしています。だから、良い・悪い、正しい・間違い、こうあるべき、こうしなければならない等の判断をする役割があります。
 一方、【潜在意識の中心は「感性・感覚・感情」です。】潜在意識には、過去に経験したことや言われたことなど、すべての情報が記録されています。(中略)
 特に子どもの頃などは、親に言われたことを純粋に信じてしまうことが多いですよ。【それによってできた信念によって、あなたの言葉、感情、行動パターンがつくられていく】のです。

【『大丈夫!すべて思い通り。 一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』Honami(KADOKAWA、2021年)以下同】

 因みに、『大丈夫!すべて思い通り。 Don't Worry! Everything will go the way you want it to.  一瞬で現実が変わる無意識のつかいかた』が正確なタイトルである。あまりにも陳腐で、とても来年還暦を迎える男が手に取る本ではない。しかし、である。面白いのだよ。これが中々(笑)。

 私は基本的にきちんとした氏名のない作者の本は読まない。自分の名すら明かせないような人物が放つメッセージには必ず偽りがあると考えているからだ。たとえ人に言えないような過去があったとしても、せめてペンネーム程度の名前を記すのが読者に対する最低限の礼儀だと思う。

 著者にはそれほど悟りの高みは感じない。だが文章が誠実でバランス感覚に富んでいる。ま、言ってみれば「感じのよい女性」である。時折、筆の勢いに任せてデタラメを書いているが、大目に見てよかろう。例えば上記テキストだと、「すべての情報が記録されています」が嘘である。記憶の研究はかなり進んでいて、エピソード記憶は意外なほど欠落していることが判明している。更に誤った記憶が多いことも明らかになっている。

「思い通り」の証拠として、著者自身の中学1年と3年の顔写真が掲載されているが全くの別人にしか見えない。この写真自体を疑うこともできるが、私としてはやはり生き方が一変すると相貌も変わることはあり得ると信じる。生きる姿勢の明るい暗いはまず表情に出る。言葉で嘘をつくことはできても、表情を誤魔化すことは難しい。

受け取りたければ、手放すのが先

 さて、いよいよ実践をしていきましょう。
 まず初めに行うことは、【「不要なものを手放す」】ことです。
【衣食住など身の回りに関する物・コトはもちろん、人間関係、不要な思い込みなど、目に見えるものも見えないものも、いらないものはすべて手放していきます。】
 不要なものをため込むと、あなたの運気が巡らなくなってしまうのです。
 いろいろ学んでいるのにうまくいかない現実に悩んでいる方は、いらないものをため込みすぎているかもしれません。
「出入口」とは言いますが、「入出口」とは言いません。出るのが先で、入るのがあとです。「呼吸」も「吸呼」とは言いません。まず吐くことが先で、吸うのが後です。「ギブアンドテイク」も「テイクアンドギブ」とは言いません。与えることが先で、受け取るのが後です。
 つまり、【良いものを取り込みたかったら、まず出すことが先】なのです。


「不要なものをため込むと運気が巡らなくなる」――ウーム、なんと説得力のある言葉だろう。「私の部屋を見たのか?」と言いたくなる指摘である。私は運気に興味はないが、「流れ」があることは営業や商談を通して常々感じている。実際に物があふれていると空気の流れが悪くなる。そして黴(かび)が生える。本当に生えているのだよ(笑)。

 ここはひとつ思い切って実践してみるしかない。

 なぜそこまで躊躇なく手放せるのかというと、【手放せば入ってくるというエネルギーの流れを信頼している】からです。
 実際にやってみるとわかりますが、捨てることで自由な感覚になり、運気が巡るのがわかります。

 家の至るところが「奥の細道」と化している我が家の埃(ほこり)を思わずにはいられない。

 ため込むと気が停滞してしまいますが、手放すことでエネルギーが回り出すのを実感すると思います。【すべてのモノや状況とあなたはつながっている】ので、エネルギーが回り出すことで、混沌としていた状況も整い出すのです。
 そのため、望む未来を手に入れたいのなら、最初にすべきことは、ため込んだ不要なものを手放すことから。

 いや、実際問題として埃だらけになるのよ。神道のお祓いなんかも、少量の塵(ちり)や埃であっても気の流れを阻害する要因として捉えているのだろう。もしも、あなたの家がゴミ屋敷であれば、直ちに引っ越すのが手っ取り早い。

【一番よくないのは、玄関が靴であふれている状態】です。
 玄関は運気が入ってくる入り口です。それなのに、その玄関が靴であふれているようでは、運も逃げていってしまいます。(中略)
【物は増えるほどいろいろなエネルギーが混ざるので、必要なものだけにして、シンプルな状態に保っておくのがベスト】です。

 二の句が告げず。

 家の中にたまる紙のナンバー1と言えば本!
 本を欠いている私が言うのもなんですが(笑)、【紙類は邪気を吸うので、私はなるべく置かないようにしています。】
 思い入れが強い本以外は、読んだらどんどん手放します。雑誌、新聞、チラシも同様です。

 これもね、元古本屋からすると「なるほど!」と唸(うな)らされた。邪気=湿気である。そして埃ね。並んだ本の背の上に溜まった埃は年数を経て、ページをも侵食するのだ。それゆえ発送する書籍はアルコール消毒をした上で、本の背を歯ブラシで掃除したものだ。

 中野善壽〈なかの・よしひさ〉は「本も捨てる」と書いていた(『ぜんぶ、すてれば』)。再読する場合は買い直すというのである。中々の見識である。

 私も老い先がそろそろ見えてきたので、小室直樹方式でこれはという書籍については、10回くらい一気に繰り返して読もうと考えている。

「捨てられない執着心」を捨てるところに眼目を置こう。