・認知症に伴う物盗られ妄想
妄想とは現実にあり得ないことを真実と思い込み、【周囲の人がどれだけ否定しても訂正不能な状態】です。認知症の患者さんで多いのは「【物盗られ妄想】」で、たとえば財布がないことに認知症の人が気づいた場合、自分が「どこかにしまい忘れた」とは思わず、探しもせずに、「誰かが財布を持っていった」「誰かが盗んだに違いない」と考えてしまう。そして介護してくれる人が目に入ると、その人が盗んだに違いないと確信してしまいます。(中略)
「物盗られ妄想」のほかにも、食事のときに家族が話題にしていることが理解できないと、「【自分をのけ者にしている】」と被害妄想的に考えたり配偶者が自分を無視する態度を見せると【「浮気をしている」と嫉妬妄想】に発展することもあります。
認知症の患者さんの【妄想にどう対処】したらいのでしょうか。
まず患者さんの話を聞きます。「物盗られ妄想」が介護者に向けられると、介護者は訂正しようとむきになりますが、【我慢して患者さんに共感する態度で接します】。(中略)
十分にコミュニケーションがとれなくても、【患者さんの話を聞くだけでよい】のです。
【『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100% 変わる!』吉田勝明〈よしだ・かつあき〉(IDP出版、2017年)】
私の父が生前、近所のおばあさんの面倒をみていた。ちょっとした資産家だった。おじいさんが亡くなった後、実の息子二人が怪しい動きをしたため、父が資産の管理までしていた。ところが、このおばあさん、「小野さんにカネを盗られた」と言い出した。短気を絵に描いたような性格の父は、それっきりおばあさんと縁を切った。
かようなケースは想像以上に多い。一番親しくしていたヘルパーさんを泥棒呼ばわりして、まるで墓穴を掘るような所業に至ることも多い。物盗られ妄想は女性に顕著な症状で男性は少ない。
日本は、1970年に「高齢化社会」に突入しました。その後も高齢化率は急激に上昇し、1994年に高齢社会、2007年に超高齢社会へと突入しました。
【日本の超高齢社会の特徴 | 健康長寿ネット】
以前から何度も書いてきたが義務教育で介護を教えるべきだ。で、介護の概念や手法もさることながら、まずは「介護の当事者となった際の判断」を知ることが重要だと思う。「どうしていいのかわからない」~「家族で抱え込んで疲弊する」という事態を避けるためにも。
「患者さん」という言葉が気になって仕方がなかった。介護事業は客へのサービスだが、家族はそうではない。まずは受け容れるか、受け容れないかという選択肢がある。「どうなったら施設に入所するか」は最初に考えておく必要がある。そうでないと必ず誰かの犠牲を伴う。
躊躇していたり判断を誤ると仕事に支障が出る。徘徊が始まると事故は防ぎようがない。
タイトルはやや大袈裟だが、認知症の基本が網羅されていて初心者にもわかりやすい。自分の親が60代になったあたりで、転ばぬ先の杖として読んでおきたい。