古本屋の殴り書き

書評と雑文

正確な順番は 宇宙誕生→インフレーション→ビッグバン/『人類が生まれるための12の偶然』眞淳平:松井孝典監修

『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 ・正確な順番は 宇宙誕生→インフレーション→ビッグバン

・『人間原理の宇宙論 人間は宇宙の中心か松田卓也
『養老孟司の人間科学講義』養老孟司

宇宙

 つまりこの時点の宇宙では、膨大な「真空のエネルギー」が存在しているところに、宇宙の温度の急低下という現象が起きたことになります。
 このことは、宇宙の「相転移」(そうてんい)という現象を引き起こしました。
相転移」とは、水が氷になるように、物理的・化学的な条件の変化によって、物質などの形態が変わることを指しています。水が氷に変わるときには「潜熱」(せんねつ)が出ますが、宇宙の相転移においても、これと同じように膨大な量の潜熱が解放されたのです。
 それによって宇宙は、瞬時に超高温の火の玉になりました(『宇宙はこうしてできた』)。
 これが「ビッグバン」です。
 宇宙誕生を、ビッグバンと同じことだととらえている人も多いようですが、現在の宇宙物理学では、まず宇宙の誕生があり、その後のインフレーションによる宇宙の相転移から、ビッグバンが起きたと考えられています。

【『人類が生まれるための12の偶然』眞淳平〈しん・じゅんぺい〉:松井孝典〈まつい・たかふみ〉監修(岩波ジュニア新書、2009年)】

東京大学宇宙線研究所」のクレジットがある以下のイラストも間違っている。基本的な事柄の勘違いは見直すことが殆どない。思い込みの恐ろしさが理解できよう。

 そもそもビッグバンという名称は、定常宇宙論を唱えていたフレッド・ホイルが小馬鹿にして呼んだものだ。しかしながら、そのネーミングの妙はあまりにもインパクトが大きかった。誤解の原因はそんなところにもあると思われる。

「宇宙に始まりがある」という考え方はアインシュタインを始め、ハッブルなどからも忌避された。時代の常識から解放されることの難しさが見て取れる。

「宇宙が生まれたということは、そこに空間があったはずだ」などと凡人は指摘することだろう。そうではない。宇宙誕生以前に時空は存在しないのだ。我々の頭では「何もない場所」を想像することが不可能に近い。

「ビッグバン(英: Big Bang)とは、宇宙は非常に高温高密度の状態から始まり、それが大きく膨張することによって低温低密度になっていったとする膨張宇宙論(ビッグバン理論)における、宇宙開始時の爆発的膨張」(Wikipedia)。この記述も誤っている。時間がある時にでも直しておくよ。

 尚、本書は大変勉強になったが、あまりにも教科書的な記述に傾いていて読み物としては面白くない。更に人間原理を示しておきながら一度も「人間原理」という言葉が出てこないのもおかしい。更に結論部分で環境ファシズムを臭わせる文章があり、左翼っぽさを感じてしまった。