古本屋の殴り書き

書評と雑文

小さなモチベーションを持ち続ける/『Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』トッド・ローズ、オギ・オーガス

『まず、ルールを破れ すぐれたマネジャーはここが違う』マーカス・バッキンガム&カート・コフマン
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ
『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン
『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽

 ・標準化されたシステムが選択の機会を奪う
 ・小さなモチベーションを持ち続ける

必読書リスト その三

 あなたが「好きなこと」「本当にやりたいこと」は、あなた個人の感情面の“核”を成している。あなたが何を求め、何を求めないか。これによって、あなたという個人が固有の存在として定義づけられるのだ。
 あなたの個性が本当に重要であるということを守り抜く唯一の方法は、あなたが抱く心からの願望を尊重することである。「自分が本当にやりたいこと」と実際にやっていることが合致するなら、あなたの今後辿る道は魅力的で満足のいくものになるだろう。逆に、もし「自分が本当にやりたいこと」を誤って判断したり無視したりすると、あなたの進む道はわびしく退屈なものになるか、あるいは、その道を断念することにもなり得る。
【自分のモチベーションの本質を理解することが、充足感を得るために不可欠である。】あなた独自のやる気を発揮することによってのみ、あなたは本来の自分の存在意義も、自己としての完全姓も実感できるからだ。ダークホース的な考え方から引き出される主要な過大は、個性を生かすことであり、この課題遂行が始まるのは、【「自分を本当にやる気にさせるもの】」を見定めようとあなたが決めた瞬間だ。

【『Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』トッド・ローズ、オギ・オーガス: 大浦千鶴子〈おおうら・ちづこ〉訳:伊藤羊一〈いとう・よういち〉解説(三笠書房、2021年/原書、2018年)以下同】

「好きなこと」とは“適性”である。わがまま放題という意味ではない。個性は【興味・関心の方向性】に表れる。私は普通の人と比べれば格段にストレスの少ない人生を送ってきた。小学生の時分から、「ストレスは溜めない」「ストレスはその場で吐き出す」生き方を自然と身につけていた。それゆえストレス耐性が極端に低く、つい荒っぽい行動に出てしまう。

 還暦を過ぎた私からすれば将来もへったくれもないわけだが、「好きなこと」を真剣に考えてみた。本を読むことは、もはや好きとかいう段階を超えていて、ある種の病状となっている。格闘技やジムカーナをやりたいと思っているが仕事にはつながらない。

 取り敢えず仕事という概念を無視した。何度も繰り返し視聴する動画や、幼い頃からの性癖を思い返した。すると直ぐに気づいた。私が好きなのは、「人を驚かす」ことだ(笑)。小学生の頃からその場で思いついた寸劇をやったり、数々の陰謀を企ててきた。10代でスポーツに勤(いそ)しんできたのも、見る人をして驚かせるファインプレーをするためだった。ここ一番の勝負強さは美技によって証明されるのだ。

 自分の特性や適性を知ることは新たな可能性を開いてくれる。たとえ、それが生業(なりわい)にならなかったとしても、コミュニティやコミュニケーションで発揮することは可能だ。

 だから【「小さなモチベーションを見つける」】が、ダークホース的な発想の最重要かつ第一の要素なのだ。あなた自身の好みや関心、興味を尊重せずに、「標準化されたシステムが考えるあなたの好み」に沿って進むと、良くないことが起きる。

 標準化されたシステムとは「制度」である。制度の目的は選抜し、排除し、削ることにある。そして制度のあり方が疑問視されることはない。なぜなら制度は前提であるからだ。特定の職業には学歴、資格、免許が不可欠で門外漢が入り込む余地は残されていない。

 しかも制度でありながら、選ぶ側の嗜好(しこう)で決められる。凡庸な採用者が個性的な若者を好むわけはなく、才気煥発な管理者が実直で控えめな学生を評価することもない。女性の場合、顔で選ばれるケースも多い。もっと卑近なことを言えば、自分や自分の知り合いと似たタイプを好む性向が誰にもある。

 本書は「万人がダークホースだ」と声高らかに宣言する。そして希望のラッパが鳴り響くような結論へと導く。