古本屋の殴り書き

書評と雑文

カネではなく富を求めよ/『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン

『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー
『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ
『ジャック・マー アリババの経営哲学』張燕
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
ナヴァル・ラヴィカント「幸福の選択とは何なのか」

 ・カネではなく富を求めよ
 ・レバレッジ
 ・きらめく言葉の数々

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽
『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子
『Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』トッド・ローズ、オギ・オーガス

必読書 その三

 金儲けは「する」ものではない――身につけるスキルだ。


【『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン:櫻井祐子〈さくらい・ゆうこ〉訳(サンマーク出版、2022年/原書、2020年)以下同】

 本書は公益に資する目的で制作された。PDF版は無料でダウンロードできる。ナヴァル・ラヴィカントは一切利益を得ていない。内容はナヴァル・ラヴィカントが共有した投稿記事、ツイート、対談で構成されている。ナヴァル・ラヴィカントは1974年インド・デリー生まれ。9歳でニューヨークへ移住。25歳で起業をした。44歳で「年間最優秀エンジェル投資家」に選出される。現在、個人投資家として約200社に投資し、いくつかの企業の相談役を務めている。

 現代人の脳は資本主義で汚染されているため対価を支払って読むのが正しい。身銭を切ることで意識のスイッチが入るためだ。ま、悲しい現実ではあるが。

 金儲けがスキル(技能)であれば誰もが学べる。では、早速学んでいこう。

 カネではなく、地位でもなく、富を求めよ。富とは、君が寝ている間も稼いでくれる資産だ。カネとは、時間と富を人に与えるための手段だ。地位とは、社会階層内での君の立ち位置だ。

労働収入と権利収入/『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 経済的自由があなたのものになる』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター

 地位を得れば周りの人間がペコペコしてくれる。それだけのことだ。具体的な価値はさほどない。

「地位のゲーム」をする人は無視せよ。彼らは「富の創造ゲーム」をする人を攻撃して地位を得ている。

 例えばリクルート事件(1988年)で逮捕された江副浩正、あるいはライブドア事件(2004年)で逮捕された堀江貴文などが思い浮かぶ。出る杭は打たれるという日本社会の典型的な事件であった。個人的にはどちらの事件も冤罪であると考えている。

 テレビや新聞で彼らを悪し様に罵った連中が「地位のゲーム」をする人である。

 問題は、地位のゲームで勝つためには、誰かを蹴落とす必要があることなんだ。
 だからこそ、【君の人生では地位のゲームを避けなくてはならない――怒りに満ちた闘争的な人間になってしまうからだ】。誰かを蹴落として、自分や自分に似た誰かを持ち上げるために、君はいつまでも戦いつづけるはめになる。

 本質を言い当てている。

 くだらないゲームは賞品もくだらない。

 地位を失えば空虚な人間ばかりだ。実業家の足を引っ張る虚業家に騙されてはいけない。

 ナヴァル・ラヴィカントが説く「富」とはエクイティを意味する。具体的には「事業の一部」を所有することであり、起業と株式保有を勧める。

 インドはブッダクリシュナムルティを生んだ国である。ナヴァル・ラヴィカントはビジネスマンでありながら、思想家と目されている人物で、シリコンバレーに大きな影響を与えている。ただの天才でもなければ、ただのリベラリストでもない。次の時代の扉を押し広げていることが言葉の端々から伝わってくる。