古本屋の殴り書き

書評と雑文

経済は「読み解く対象」から「創り上げていく対象」に変化/『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽

『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』山本康正
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ
『ジャック・マー アリババの経営哲学』張燕
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原和啓
ナヴァル・ラヴィカント「幸福の選択とは何なのか」
『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン

 ・「日本のナヴァル・ラヴィカント」になり得る人物
 ・経済は「読み解く対象」から「創り上げていく対象」に変化

『お金の不安と恐れから自由になる! 人生が100%変わるパラダイムシフト』由佐美加子
『Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』トッド・ローズ、オギ・オーガス

情報とアルゴリズム
必読書 その三

【経済とは簡単に言うと「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」です】。

【『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽〈さとう・かつあき〉(幻冬舎、2017年)以下同】

 章の見出しに“経済とは「欲望のネットワーク」”とある。つまり、「社会における欲望調整の最適化」が行われているわけだ。具体的には収入と支出に収まる。お金は潤滑剤でもあり血液でもある。するってえと、我々は労働価値を消費価値と交換しているだけなのだろうか? 俺たちは「働いて買う」だけの存在なのか? 多分そうなのだろう。経済的な視点に立てば。

 ところが人生の豊かさはお金の収支とは別のところで感じるものだ。仕事のやり甲斐、協働の成果、趣味の楽しみ、交友関係、地域貢献など、必ず何らかのコミュニケーションが介在している。佐藤はそれを「承認欲求」としているが、承認する-されるというよりももっと深い次元のものだ。互いの存在がぶつかり、溶け合い、一つになる関係性を社会的(群れ)動物は志向するのだろう。ピッチャーだけで野球はできないし、オーケストラの奏者が承認欲求で演奏しているわけではあるまい。

 そして、手軽にネットでサービスを作って世界中の人に使ってもらえるような時代になった今、【経済は「読み解く対象」から「創り上げていく対象」に変化しつつあります】。

 世の中の悲劇や不幸の多くは、悪人によって起こされるよりも、実際は、誤った仕組みが大規模に社会に適用されることによって起きているほうが多いのです。
【社会における多くの非効率や不幸を最小にするためには、物事をうまく回すための普遍的な構造を理解し、何かを新しく創る人たちが、それを使いこなせるようになることが近道です】。

 例えば楽天である。「楽天の成功は楽天経済圏を作ったこと」と堀江貴文が指摘していた。楽天経済圏とは楽天ポイントをマネーの代わりに使えるエリアのこと。私にとっては「ちょっとお得」な程度の信用創造に過ぎないが、人によっては月に数十万円もせしめいてるケースがある。

 これから考えるべきは転職先ではなく、自分がいかにして「経済を創り上げるか」である。賃労働はどんなに頑張っても時給の壁を越えられない。8時間労働×5日間×50週間で計算すると時給1000円で年収は200万円となる。時給が5000円であれば年収は1000万円になるが、富を築くことはできない。つまり、レバレッジを効かせることが不可能なのだ。

「片づけ」を武器に現在、世界で活躍している近藤麻理恵〈こんどう・まりえ〉も見事に「経済を創出した」人物の一人であろう。各人が好きなこと、得意なことを社会に押し広げてゆく知恵が求められている。