古本屋の殴り書き

書評と雑文

「消費税は社会保障の財源のために導入された」という嘘/『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん

『平成経済20年史』紺谷典子
『円の支配者 誰が日本経済を崩壊させたのか』リチャード・A・ヴェルナー
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一
『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
令和3年度税制改正大綱の闇 簿記が暴く税金の真実(室伏謙一×森井じゅん)
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 ・次の衆院選までに必ず読んでおきたい一冊
 ・「消費税は社会保障の財源のために導入された」という嘘

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税金

森井●まず、消費税はその建前と実態が全く異なるものです。まやかしと間違った刷り込みによってこれまで存続してきてしまいました。存在してきたどころか、3%で導入されて増税が続き、まさに小さく産んで大きく育てられ、いまや10%。大きすぎるサナダムシに成長させられました。
 消費税については、これまで賛否両論さまざまな議論がされてきましたが、前提となる「消費税とは何か」というところにたくさんの誤解があるため、本質に迫る議論になりませんでした。
 その消費税の議論すら封じようとするのが、「消費税は社会保障の財源のために導入された」という、まことしやかに語られる間違いです。消費税が減税されたら大変なことになる。社会保障がボロボロになる、と思わされています。社会保障というセーフティネットは私たちの生死に直結するものです。その社会保障を人質に取られた状態で、まともな消費税の議論ができるでしょうか。(中略)
 導入の話に戻りますが、消費税は社会保障のためではなく「直間比率の是正」という財界の要望のもと導入されました。経団連やそのような財界が所得税法人税といった直接税は下げてよ、その代わり財界にとって有利な税制を入れてよ、という要望を出したのです。これが直間比率の是正だったんですね。

【『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡〈ふじい・さとし〉、森井〈もりい〉じゅん(ポプラ新書、2022年)以下同】

 消費税の推移を振り返ってみよう。

 1989年/平成元年 3%(4月1日~)
 1997年/平成9年 5%(4月1日~)
 2014年/平成26年 8%(4月1日~)
 2015年10月/平成27年 消費税率10%へ増税(延期)。
 2017年4月/平成29年 消費税率10%へ増税(再延期)。
 2019年/平成31年 10%(10月1日~)/令和1年 軽減税率8%

 私はずっと財務省が主導したものだと思い込んでいた。大企業が国民の敵だったとは……。彼らは自分の報酬を上げたいのだろうか? 否そうではあるまい。資本主義に内蔵された自律運動が利益を求めてやまないのだろう。そのためとあらば、消費者である国民をも犠牲にするというわけだ。そして財界は今も尚、消費税増税を提言し続けている。

森井●メディアやテレビでも経済学者やコメンテーターが、法人税を下げないと国内の企業が海外に出て行ってしまう。雇用もなくなって大変なことになる、と言ってあおった面があります。法人税を下げれば、日本の競争力も上がる、と。
 仕事上いろいろな会社を見て話を聞きますが、実際に海外へ行くのは日本に需要がないからですね。間違った経済政策のせいで、日本は貧しくなってみんなが消費できない。だから需要のある海外へ、というのが実感です。

 ただし、政府の無策も見逃すわけにはいかない。例えば電気料金である。諸外国と比べると日本の電気料金は高い。製造業にとっては死命を決する場合がある。自民党原子力発電を推進してきたがメリットはないと考えてよかろう。また、ガソリンも高く、特に二重課税は完全な憲法違反状態が続いている。

森井●財界の要望どおり、消費税が導入され増税され、そして法人税は引き下げられ、所得税最高税率が引き下げられフラット化しました。

 本来であれば左翼の出番となるわけだが、日本の左翼は世界でも珍しく愛国心がないため国民心情に訴えるものがない。

 日本の伝統や文化を踏まえると天皇陛下を中心とした共同体主義が望ましいと考える。

 その前提として、大企業と財務省を討つ方途を探らなくてはならない。