古本屋の殴り書き

書評と雑文

次の衆院選までに必ず読んでおきたい一冊/『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん

『平成経済20年史』紺谷典子
『円の支配者 誰が日本経済を崩壊させたのか』リチャード・A・ヴェルナー
『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一
『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
令和3年度税制改正大綱の闇 簿記が暴く税金の真実(室伏謙一×森井じゅん)
日本の給料を引き上げる処方箋は何なのか?【三橋TV第362回】三橋貴明・森井じゅん・高家望愛

 ・次の衆院選までに必ず読んでおきたい一冊
 ・「消費税は社会保障の財源のために導入された」という嘘

経済
税金

藤井●消費税のせいで日本は大変に貧困化してきた、という事実があるのですが、まず最初に実際、我々がどれだけ貧困なのかというお話から始めたいと思います。
〔図表1〕のグラフを見てください。いまや日本の入社1年目の年収というのは、韓国以下になっています。スイス800万円以上、アメリカ630万円以上、ドイツ530万円以上、ノルウェー450万円以上、シンガポールや韓国でも300万円前後ですが、日本は262万円。ものすごく貧乏なんですね。ちょっと先進国とは言えないような状況になりつつあり、我々よりも貧困なのは台湾や中国、タイなど。中国というのは、お金持ちもいますが平均で見ると、すごく貧しい国ですから、それぐらいになっているということですね。

 いつからこうなっているのかというと、〔図表2〕のGDP国内総生産)のグラフを見るとわかります。GDPとは、日本経済の規模をあらわす指標で、その年に生産されたモノやサービスの総額であると同時に、国民全体の所得の合計値であり、国民全体の支出の合計値でもあります。そのGDPが、ご覧のように1980年から1997年までずっと伸びていたんですね。当然、1980年までは高度経済成長の時代ですから、もっと激しく伸びていました。

 戦後一貫して伸びていたのに、1997年から全く伸びなくなっている。なぜ伸びなくなったのか。消費税が増税されたからですね。僕が消費税が極めて重大な問題を抱えた税制だと思ったきっかけになったのが、このグラフでした。消費増税が原因で、これだけ所得が下がってきているということが、このグラフを見れば明らかです。消費税がすべての元凶なんですね。
 その結果、どうなったかということをあらわしたのが〔図表3〕のグラフです。97年のピークまでは諸外国と同じペースで成長していたおに、日本が97年の増税で伸びなくなった一方で、諸外国はそのまま伸びていっています。(中略)
 この〔図表3〕のグラフは、何かしら世界的な要因で日本が伸びなくなったわけではなく、97年に起こった日本「固有」の要因で二歩だけが伸びなくなっている一方で、世界各国は右肩上がりで成長し続けているからです。

 97年にアジア通貨危機が起こったので、それが原因で日本は失われた20年、30年が始まったという言説がありますが、それは明らかに間違いです。アジア通貨危機が起こったのは日本だけでなく、むしろ震源地がアジアだったわけで、アジア各国がもっと被害を受けてもいいはずなのに、他国はどんどん伸びていて日本だけが伸びていない。だからGDPが伸びなくなったことの原因はアジア通貨危機なんかじゃないわけです。97年に起こった日本固有の要因があるとしか考えられないのです。97年に起こった、日本経済にそこまでの激しいインパクトを与える日本固有の要因って何かといえば、3%から5%への「消費増税」くらいしか考えられないわけです。

【『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡〈ふじい・さとし〉、森井〈もりい〉じゅん(ポプラ新書、2022年)】

 藤井があまり好きではない。噪(さわ)がしくて軽い印象がある。個人的には森井に注目した。税の目的を明らかにし、消費税が悪税であることをはっきりと示した人物である。ただし、私の頭が悪いせいもあるのだろうが動画だと話がわかりにくい。その点、対談を編んだ本書はわかりやすい。次の衆院選までに必ず読んでおきたい一書だ。日本人を貧しくしてきた自公政権財務省の責任がくっきりと見えてくる。

財務省は最優秀の人材が多いので、政治家を籠絡(ろうらく)するのはわけもない」とは髙橋洋一の口癖だ。つまり、政治家が馬鹿だと言っているのだろう。

 日本における消費税の大雑把な歴史は以下の通りである。

・1989年 3%の消費税導入 竹下内閣
・1994年 1997年から5%に増税する税制改革関連法案が成立 村山内閣
・1997年 5%増税実施 橋本内閣
・2011年 三党合意 第2次野田内閣
・2013年 消費税を5%から8%へ増税することを閣議決定 第2次安倍内閣
・2014年 8%増税実施 安倍内閣
・2016年 消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月1日まで2年半再延期 第3次安倍内閣
・2019年 10%増税実施 第4次安倍内閣

 安倍首相をもってしても増税を防げなかったわけだから、財務省の権力は首相や与党を上回るものと考えてよかろう。

 官僚は省益のために働くと言われる。省益とは次年度予算と天下り先の確保だ。

「東大はもともと国に仕える官僚養成学校として設立されており、特に東大法学部生は大半がエリート官僚になる時代もありました」(東大法学部OBが教える東大法学部卒業生の進路)。

 江戸時代の官僚といえば武士である。武士に支払われる対価は米だった。当時、カネを握っているのは商人である。「武士は食わねど高楊枝」という俚諺(りげん)からもわかるように、経済的な満足度は低かったことだろう。その伝統は昭和20年(1945年)まで受け継がれた。10代のエリートたちは特攻隊員となって日本を守ったのだ。

 現在のエリートがエゴイズムと保身しか考えていないとすれば教育が間違っているのだろう。あるいは、何かしらの戦後密約があって政治家の伺い知れぬところで省庁がアメリカの指示に従っている可能性もあると勘繰りたくなる。

 LGBT理解増進法の成立、中国製ソーラーパネルの席巻、在日外国人問題(ムスリムの土葬、埼玉県川口市クルド人問題、中国人の生活保護受給)を通して、日本人のストレスは否応(いやおう)なく高まり、それが反自民に向かいつつある。そして自民党にとっては最悪のタイミングで安倍晋三元首相が暗殺され、裏金問題が発覚した。

 安定した老後と贅沢(ぜいたく)な暮らしを望むエリートがこの国を滅ぼすのであろうか? だとすれば、勉強する意味はもはやない。好きなことすらできなかった彼らの抑圧された感情は凡人の想像を絶するレベルに至っていることだろう。

 国家が国民を食い尽くした時、国家は死に絶える。