古本屋の殴り書き

書評と雑文

言葉が歌から生まれた可能性/『言葉はなぜ生まれたのか』岡ノ谷一夫

『心身を浄化する瞑想「倍音声明」CDブック 声を出すと深い瞑想が簡単にできる』成瀬雅春
『歌うネアンデルタール 音楽と言語から見るヒトの進化』スティーヴン・ミズン

 ・言葉が歌から生まれた可能性

・『言葉の誕生を科学する小川洋子岡ノ谷一夫

 じつは、発声学習できる動物には「息を止めることができる」という共通点があります。「そんなの、犬やネコだってできるだろう?」と思うかもしれませんが、イヌ(ママ)もネコも息を止めることはできません。あるいはサルもウマもシカも、発声学習しない動物はみな、自分の意思で息を止めることができないのです。一方、発声学習できるオウムや九官鳥、イルカ、クジラなどは、自分の意思で自由に息を止めたり吸ったりできます。

【『言葉はなぜ生まれたのか』岡ノ谷一夫〈おかのや・かずお〉:石森愛彦〈いしもり・よしひこ〉絵(文藝春秋、2010年)以下同】

 内容はそこそこいいのだが、如何(いかん)せん児童書である。読み物としては物足りない。

「息を止める」ことは多分呼吸のコントロール能力と結びついている。ご存じのように呼吸は自律神経によって無意識で行われているが、意識的に速さ・深さを変えることも可能だ。これが呼吸法-瞑想につながる。呼吸法を極めると冷水の中でも体温を維持でき、心臓の拍動を止めることもできる。

【人間は「ことば」をもつより前に、「歌詞のない歌」をうたっていたのではないだろうか?】

 実は私も予(かね)てからそう考えてきた。思いついたのは20代の頃だ。ヒントになったのはアフリカのトーキングドラムである。隣村の者同士がドラムで挨拶を交わすのだ。また、人類は鳥から歌を学んだという説も手掛かりとなった。最初の歌はやはり生死にまつわるものだったと想像する。ある時は親の死を泣き悲しみ、ある場合は子の誕生を喜び、微笑みながら歌を口ずさんだことだろう。

 御経(おきょう)もまた歌である。ま、今となってはラップが存在するからわかりやすい。

 いい歌声は風を想わせる。吹き込まれた息が笛を鳴らすように、豊かな声帯の振動は不思議なバイブレーションを生む。

 かつて私の古書店掲示板で「言葉は歌から生まれた説」を開陳したところ、恐ろしく博識な常連のオッサンから、「最初は名詞から始まったというのが定説だ」と斬り捨て御免の仕打ちにあった。1999年の話だ。

 無論言葉は痕跡を残さないから精確なことはわからない。とはいうものの赤ん坊が言葉を覚えるまでの成長を仔細に研究すれば、おおよそのことは判明するように思う。

 私は弟妹3人を赤ん坊の頃から世話をしてきたが、その経験から申せば赤ん坊をあやすのとハミングはセットである。そして実はハミングが恐ろしく健康によいことが科学的に立証されている。「健常人10人を対象とした実験で、ハミング下では通常の鼻呼吸下と比べ、鼻腔内の一酸化窒素濃度が15倍に上昇したという」(Wikipedia)。

ハミングがウイルスを防御/『免疫力を上げ自律神経を整える 舌(べろ)トレ』今井一彰
「NO力」を高める/『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎