古本屋の殴り書き

書評と雑文

気海丹田を悟る/『白隠禅師 健康法と逸話』直木公彦

『古武術と身体 日本人の身体感覚を呼び起こす』大宮司朗

 ・気海丹田を悟る
 ・病になるときには、病になるがよろしく候、死ぬときには、死ぬがよろしく候

『静坐のすすめ』佐保田鶴治、佐藤幸治編著
『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』エックハルト・トール
『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』ネドじゅん

お腹から悟る
身体革命
必読書リスト その五

 白隠禅師のこの呼吸法を、調心調息調心法による完全呼吸法と名づけたのでありますが、完全呼吸法をもう少し区分して考えてみますと、つぎのようなものになるものとおもわれます。
(一)、横隔膜を下にさげて緊張させる。
(ニ)、肺の内圧と腹圧とを高める。
(三)、横隔膜と腹部や内蔵の機械的運動をおこなう。
 第一の横隔膜を下にさげて緊張させますと、なにゆえ健康によろしいのでしょうか。横隔膜の上下には脳脊髄神経系と交感神経系がきており、この二つの神経系を連絡する迷走神経系が横隔膜をつらぬいて分布しております。それで横隔膜を下にはりながら上下にやわらかい運動を繰りかえすときは、三つの神経系統に緊張と刺激とをあたえることになりますので、精神的にも緊張をあたえるのではないでしょうか。かなしんだり、おどろいたり、おそれたりしますと、横隔膜は上ってしまいます。横隔膜を下げて下腹部に力を入れておりますと、大抵のことにはビクつかず、落ちついていることができるのであります。このおゆに横隔膜を張りますと三種類の神経系統によい影響をおよぼし、精神的落ちつきをたもち、ひいては肉体的にもこのましい結果をもたらすものとかんがえられます。
 第ニに、肺の圧力は大気圧とそれよりも低い陰圧とのあいだを往復するのであります。肺の末端の肺胞内にて血液中の炭酸ガスその他の有機ガスと酸素とを交換し、血液中のヘモグロビンに酸素を固定させ、体内を循環させ、生態の燃焼作用をおこなわせて新陳代謝をおこなうのであります。結局、いかに多くの酸素を血液中へ固定させうるかが、いかに健康によい影響をあたえるかということになるのであります。
 この呼吸をしていますと、肺胞内の圧力は適当に高められ、血液への酸素の浸透圧が大となり、かつ肺胞内に空気がとどまる時間が永びきますので、血液中のヘモグロビンに固定される酸素の量が多くなるのではないでしょうか。また腹圧も高められ、内蔵にも圧力をくわえることになり、腸や腎臓の内臓神経である自律神経すなわち交感神経と副交感神経をも刺激し、なんらかのよい影響をあたえるものとおもわれます。

【『白隠禅師 健康法と逸話』直木公彦〈なおき・きみひこ〉(日本教文社、1955年/改訂版、1975年)】

 やっと気海丹田を悟ることができた。位置は知っていたが感覚でつかむのとは大違いである。「横隔膜を下げる」でピンときた。息を深く吸い込むと下っ腹が膨らむ。その中心が気海(臍下〈せいか〉)丹田だ。それにしても誰がこんな場所を発見したのだろうか? 意識しているとどんどん敏感になってくる。重心が落ちる実感がある。

 時期を同じくして村木弘昌著『白隠の丹田呼吸法 『夜船閑話』の健康法に学ぶ』も読んだが、こちらの方が断然いい。

 ネドじゅんのエレベーター呼吸法も気海丹田を意識できると上手くゆくようになる。息が深くなるのだ。

 自転車やバイクに乗るのは風と出合うためだ。風は季節を知らせ、変化を告げる。とすると、呼吸もまた快感であるはずだ。体内に風を送っていると思えば、呼吸のあり方もガラリと変わる。