古本屋の殴り書き

書評と雑文

筋膜は「第二の骨格」/『自分でできる! 筋膜リリースパーフェクトガイド』竹井仁

ストレッチ

 ・筋膜は「第二の骨格」

 筋膜に関する研究が飛躍的に進んできたのが40年ほど前からです。
 医学界では、シンデレラストーリーと讃えられ、現在ではスーパースターとも言われています。

【『自分でできる! 筋膜リリースパーフェクトガイド』竹井仁〈たけい・ひとし〉(自由国民社、2016年)以下同】

 私が筋膜リリースを知ったのは最近のことである。1970年代から研究されていたというのだから、それなりに知見の集積はあると考えてよかろう。「シンデレラストーリー」「スーパースター」は営業文句か。

【筋膜は、無理にはがすのでやなく、「リリース(解きほぐす)」することが正しい方法】

 一応、カテゴリーは「ストレッチ」とした。英語版Wikipediaに「ストレッチ反射を刺戟することにより」とあったからだ。ちょっと驚いたのだが「代替医療法」とも明記されている。実際のやり方を見ると、「負荷の少ないストレッチ」といった印象を受けた。

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【筋膜とは、文字通り筋肉を包み込んでいる膜ですが、筋繊維1本1本の中にまで入り込みます。】
 さらには内蔵の漿膜化筋膜(しょうまくかきんまく/胸膜、心膜、腹膜の線維性の層)とも接続しています。
 これらの筋膜は全身に張りめぐらされていますので、筋膜以外を溶かしても身体の形が残るということで、【「第二の骨格」】ともよばれる重要な存在です。

「骨格」は大袈裟だと思うが、全身性を強調したいのだろう。昨今では脳を局所的に扱うのではなく、脳を含めた神経の全体性を扱う風潮が強く、個人的には正しい方向に進んでいると考えている。

【筋膜リリースの目的は、筋膜のねじれやよじれを元に戻し、筋と筋膜の正しい伸縮性を回復し、筋肉が正しく動けるように回復することにあります。】

 ここでありきたりな疑問が自然に湧いてくる。「なぜ、動物はそれをしないのか?」。ま、準備運動や筋トレもそうなのだが。

 文明の発達が筋肉を畏縮させているのは確かだろう(『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード)。文明とは身体運動の外部化と言ってもよい。乗り物は歩行・走行の外部化であり、掃除機は掃く・拭くの外部化であり、ガスコンロは薪(たきぎ)拾いの省略である。

 では人間にとって自然な動きとは何か? 歩く・走る・泳ぐは直ぐに思いつくが、あとは木登りや狩猟か。農作業の姿勢は不自然だと思う(『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット)。狩猟をゲーム化したのがスポーツである。ところがスポーツに血道をあげるあまり、プロスポーツの世界では体の一部を酷使して怪我が絶えない。全身性を思えば、体操とダンスとスポーツを融合したような競技が望ましいと思う。