・今日がすべて
・会社は“箱”でしかない
・ビジネス
僕が何より伝えたいのは、「今日がすべて」という言葉です。
情報が多く、将来のことも、周りの人も気になる時代において、
「今に集中する」のはどんどん難しくなっているのかもしれません。
しかし、事実として、夢中になって楽しむことができるのは今しかありません。
今この瞬間、ここにいる自分をもう一度見つめてみる。
過去にとらわれず、未来に揺さぶられず、
確かに味わうことができる今日に集中して精一杯楽しむ。
その結果は、先々にいろんな形となって巡って来るはずです。明日地球が滅びるかもしれないし、誰かをあてにしてもしょうがない。
自分を花開かせることができるのは、自分自身に他ならない。
すべては因果応報。将来をつくるのは、今日の自分。
今日の自分を妨げるものはぜんぶ捨てて、
颯爽と軽やかに、歩いていこうじゃありませんか。【『ぜんぶ、すてれば』中野善壽〈なかの・よしひさ〉(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年)】
amazonで888個の評価で星四つというのは凄い。若い人向け。あるいは何も考えてこなかった大人向けである。
中野は、「斬新なイノベーションを次々に実行した伝説の経営者」(日本経営合理化協会)として広く知られている、らしい。一見して貌(かお)がいい。
タイトルが思わせ振りで出版社のセンスのなさが露呈している。「全部捨てれば?」「全部捨てる」の方がスッキリしていいだろう。あるいは「全部捨てろ!」。インパクトを考えれば「捨てよ!」でもよさそうだ。
中野は基本的に物を持たないように心掛けているという。その上で本当に何でも捨てている。後日紹介するが本も思い出も捨てる。それだけではない。彼は資産をも捨てるのだ。
「27歳の時から、東南アジアの女性の就職支援や、子供たちの教育支援をしています。生きる為に必要な分を除き、稼いだお金は全部寄付している。だから稼ぎのわりにはお金ないんです(笑)」(滝川クリステル/いま、一番気になる仕事)。
実にきれいな生き方である。さながら清流の如し。「今日がすべて」というのは単なる精神論ではなく、彼の生き様そのものなのだ。蓄財は未来に備えるものだ。それは不安の裏返しでもある。強欲な資本家が不要な富を蓄積するところに社会不安が生まれる。
インドには今でも定年退職した後で出家をする文化がある。日本人も漂泊の文化を再興するべきだと思う。四国遍路の全国版だ。もちろん宗教性は抜きにして、ビジネスや趣味の交流ができればよい。
私が漂泊に憧れるのは、とにかく病院やベッドの上で死にたくないからである。畳の上も嫌だね。何かをやっている最中に死にたいのだよ。つまり野垂れ死にこそ理想とするものである。人知れぬ山中で行き倒れて、白骨になるのも望ましい。
以前から高齢者の孤独死が社会問題になっているが、実に馬鹿げたことである。死は常に孤独である。周囲に人がいれば孤独を免れると考えているところに現代人の浅はかさがある。