古本屋の殴り書き

書評と雑文

大きな変化を生み出したいなら「ものの見方」を変える/『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン

『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『食は土にあり 永田農法の原点』永田照喜治
『土と内臓 微生物がつくる世界』デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー
・『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』藤井一至
『ミミズの農業改革』金子信博

 ・大きな変化を生み出したいなら「見方」を変える

・『自然農法 わら一本の革命福岡正信

必読書リスト その三

 もっと知りたいと思った私は、1997~98年の冬、必要な金額をなんとかかき集めて、ビスマークで開催された畜産会議に参加した。登壇者のひとりにドン・キャンベルがいた。アラン・セイボリーの「ホリスティックな土地管理」を実践しているカナダの畜産家だ。ドンは、私が生涯忘れることのない発現をした。いまも日々そのことを考え続けている。ドンは言った――「小さな変化を生み出したいなら、【やり方】を変えればいい。大きな変化を生み出したいなら【見方】を変えなければ」。頭のなかに閃光(せんこう)が走ったようだった。そのときに至るまで、自分はいつも小さな変化しか起こさずに、大きな結果を願ってきたのだ。物の見方を変えなければいけないのだと悟った。はまり込んでいる穴から這い出て農場を続けていくには、システム全体の見方を変える必要があった。

【『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン:服部雄一郎〈はっとり・ゆういちろう〉訳(NHK出版、2022年)】

 このテキストだけでも必読書たり得る。ゲイブ・ブラウンは不耕起栽培の第一人者である。福岡正信著『自然農法 わら一本の革命』から影響を受けている。

「リジェネラティブ(環境再生型)農業」と呼ぶらしいが、要は畑を自然な状態にして土壌菌から昆虫・動物をも含んだ生態系と捉える。化学肥料も使わず、植物と益虫で害虫を防ぐ。土壌が劇的な変化を遂げ、チョコレートケーキのような状態となる。

 文句なしに凄い。私は物心ついた頃からミミズが大好きで、大人になってから一時期育てたことがある。時折、道端で死んだミミズを見ると胸が痛む。地球上の肥沃な土はその全てがミミズを経由したものと考えられている。こうした性癖を踏まえると、私の興味の正確な方向性は野菜よりも土であり、土よりもミミズに向いていることがわかる。

 生物を支えているのは大地だ。海といっても海底には大地が存在する。その大地が病んでいるのだ。

 最近になって物の本を読んで知ったのだが、【土は地球にしか存在しない】。他の星には岩石や砂はあっても土はないのだ。なぜなら、植物の死骸や微生物がないからだ。土こそは生と死が織り成す舞台であり、生きとし生けるもののバックグラウンドなのだ。

 そろそろ、「近代の視点」を変えるタイミングだ。効率や合理化に傾きすぎて、生きることが苦しくなってきている。

 日本の人口減少という背景を思えば、まず最初に護岸工事をやめるのがよい。川を再生しなければ海に流れる養分も少なくなる。川沿いは宅地不可とすればよかろう。