いはやは面白かった。「石丸伸二5時間スペシャル」である。石丸が名を広めたのは昨年7月の記者会見だった。中国新聞の胡子洋〈えびす・ひろし〉記者と武河隆司〈たけかわ・たかし〉次長との生々しいバトルで、かつての橋下徹 vs. メディアを髣髴(ほうふつ)とさせた。メディアには「批判する側」という思い上がりがあり、よもや政治家から批判されるとは思っていなかったのだろう。中国新聞社二人の言葉は支離滅裂になった分だけ慢心が露呈した。後に石丸(当時市長)は「一緒に仕事をする相手として相応(ふさわ)しくない」ということで胡子記者からの取材を拒否する旨を中国新聞社に通達した。
私が注目したのは石丸の常識力と礼儀正しさであった。石丸は論争している時も敬語を崩さない。そして必ずきちんとお辞儀をする。人として「姿勢がよい」のだ。更にどんな激しい議論をしても感情を引きずることがない。話し終えた途端、笑顔を浮かべることすらあるのだ。
かつては武田邦彦が参加したこともあり参政党にも注目した。ただし神谷宗幣〈かみや・そうへい〉の場合、演説は見事であったが人物に惚れることはなかった。「龍馬プロジェクト」とか「イシキカイカク株式会社」などのネーミングセンスが悪すぎる。自分が参議院選挙に当選するや否や、神谷の詐話師的な手法が露見し武田邦彦を始めとする主要メンバーが去った。
石丸伸二は「政界の大谷翔平」だと私は考える。この両者は「人類の進化」を体現しているように見える。天才とは異なり、もっと深い次元から底上げされた人間に見えて仕方がない。
尚、武田邦彦は虎ノ門ニュースで「石丸さんも駄目ですね」と具体的な政策を示さないことを批判した。私は昔から人物評価を重視してきた。「その人をどう見るか」に価値観から生き方までが表れる。誤解や不正確を忌避するよう心掛けてもきた。その意味では「武田、老いたり」と言わざるを得ない。
石丸伸二から「愛国心」の一言を引き出したのがリハック高橋の最大の功績と言ってよい。石丸は政治的な右左という概念を軽々と超越している。一方の成田悠輔は対談相手がやや左翼に傾いており、一見するとリベラル志向に見えるが、その本性はアナーキストであると私は判断している。