古本屋の殴り書き

書評と雑文

六十の手習い

 55歳からロードバイクに乗ったのだが1年ほどで降りた。自転車EDを発症したためだ。5~6時間も細くて硬いサドルの上に乗っているのだから当然だ。走り込めば臀部に筋肉がつくようだが、そこまで至らなかった。自転車乗りにとってケツの痛みは頗る深刻で、避けては通れない第一関門だ。低反発クッションを付けた程度では焼け石に水といってよい。

 その前にはバドミントンで挫けていた。ひと月で三度も肉離れを起こしてしまったのだ。ブチッと筋肉が断絶する音が聞こえたような気がした。自転車を降りてからスロージョギングを始めたのだが、これも右膝痛のため断念せざるを得なかった。歳を取るとできないことが増えてくる。無理をすれば直ちにダメージを受ける。

 結局のところ続いているのはウォーキングとケトルベルと懸垂くらいか。

 昨年、普通自動二輪免許を取得した。ま、何となくだ。六十の手習いといったところである。少し前からスズキGSX250R ABSに乗っている。バーディー50とは天と地ほどの差がある。まず、車体が大きい。そして重い(181kg)。スロットルを少し捻っただけで70~80kmの速度となる。サスペンションもしなやかに動く。

 教習所では一度も転んでなかった私が二度転んだ(因みに自転車の落車も一度もない)。二度ともUターンをしようとして立ちごけ気味にバイクを倒してしまった。左側に倒した時はシフトペダルが曲がってしまい、3速から上のギアが入らなくなった。メガネレンチで曲げを直したところギアは正常に動いた。

 立ちごけは男のプライドを傷つける。それもかなりの深手だ。動脈に達したと思うほどだ。しかし、よくよく考えてみると、二輪の醍醐味を支えているのは「倒れるリスク」である事実に気づいた。私は開き直って「ま、倒してなんぼだわな」と気持ちを切り替えた。