古本屋の殴り書き

書評と雑文

家来でも殿様の前で立って歩くことは許されない/『会津の武田惣角 ヤマト流合気柔術三代記』池月映

『雷電本紀』飯嶋和一
『日本の弓術』オイゲン・ヘリゲル
『鉄人を創る肥田式強健術』高木一行
・『肥田式強健術2 中心力を究める!』高木一行
『表の体育裏の体育 日本の近代化と古の伝承の間(はざま)に生まれた身体観・鍛錬法』甲野善紀
『武術の新・人間学 温故知新の身体論』甲野善紀
『惣角流浪』今野敏
『鬼の冠 武田惣角伝』津本陽

 ・家来でも殿様の前では立って歩くことは許されない

・『合気の発見 会津秘伝 武田惣角の奇跡』池月映
・『合気の創始者武田惣角 会津が生んだ近代最強の武術家とその生涯』池月映
・『孤塁の名人 合気を極めた男・佐川幸義津本陽
『深淵の色は 佐川幸義伝』津本陽
『透明な力 不世出の武術家 佐川幸義』木村達雄
・『佐川幸義 神業の合気 力を超える奇跡の技法』『月刊秘伝』編集部編
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』増田俊也

 御式内は殿中で殿様を守るための護身術である。
 家来でも殿様の前では立って歩くことは許されない。始めは膝行という歩き方や行儀作法のような基本を徹底して仕込まれる。
 座っている状態でいろんな角度からの攻撃に素手で立ち向かう。もちろん、立ったまま、後ろからの攻撃もある。関節技で相手を組み伏せたり、当身技で倒す。

【『会津武田惣角 ヤマト流合気柔術三代記』池月映〈いけづき・えい〉(本の森、2007年)】

 通説を網羅した内容となっているが、これはこれで参考になる。現在では大東流合気柔術武田惣角〈たけだ・そうかく〉が創始したものと考えられている。西郷頼母〈さいごう・たのも〉や武田家を必要としたのは、農民という出自を払拭するためであったのだろう。

 池月が著した惣角本を3冊読んだが、明治期における武士階級と農民との格差はまだまだ根強く、実力よりも氏素性を尊んだ日本の気風が窺える。また、明治期の風俗描写が意外と参考になった。