古本屋の殴り書き

書評と雑文

かまどの煙/『〔復刻版〕初等科國史』文部省

『三島由紀夫と「天皇」』小室直樹
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり
『愛国左派宣言』森口朗
茂木誠:皇統の危機を打開する方法
『世界史で読み解く「天皇ブランド」』宇山卓栄

 ・かまどの煙

『〔復刻版〕中等修身 女子用』文部省
・『日本とユダヤの古代史&世界史 縄文・神話から続く日本建国の真実田中英道、茂木誠

日本の近代史を学ぶ

 仁徳(にんとく)天皇は、深く民草(たみくさ)をおいつくしみになりました。不作の年が続いたころのことです。ある日、高殿(たかどの)にのぼって、遠く村里(むらさと)のようすをごらんになりますと、民家から煙一すじ立ちのぼらない有様(ありさま)です。天皇は、民草の苦しみのほどを深くお察(さっ)しになって、3年の間、税をおさめなくてもよいことになさいました。ために、おそれ多くも、御(おん)生活はきわめて御不自由となり、宮居の垣はこわれ、御殿もかたむいて、戸のすきまから雨風が吹きこむほどになって行きましたが、天皇は、少しもおいといになりませんでした。こうして3年ののち、ふたたび高殿からごらんになると、今度は、かまどの煙が、朝もや夕もやのように、一面にたちこめています。天皇は、たいそうお喜びになって「朕(ちん)すでに富(と)めり」と仰せになりました。御恵みにうるおう民草は、今こそと宮居の御修理(ごしゅうり)を願い出ましたが、天皇は、まだお聞きとどけになりません。さらに3年たって、始(ママ)めてお許しが出ましたので、喜び勇んだ民草は、老人も子どもも、日に夜をついで、宮居の御造営にはげみました。

【『〔復刻版〕初等科國史』文部省:三浦小太郎〈みうら・こたろう〉解説(ハート出版、2019年)】

 私は日教組が強い北海道で義務教育を受けたこともあって、このエピソードを知ったのは最近のことだ。武田邦彦虎ノ門ニュースで何気なく語っているのを聞いて衝撃を受けた。

 頓珍漢なamazonレビューがあった。「国にとって都合の良い人間を育てる」のは当然だが、最も大事なことは先人や先祖とつながっていることを実感できるかどうかである。その意味で皇統が重い。なぜなら日本は世界最古の国家であるが、国家よりも先んじて天皇が存在したためだ。つまり、「始めに天皇ありき」が国体の所以(ゆえん)なのだ。

 本書の直後に『日本とユダヤの古代史&世界史』を読んだだけに深い感慨があった。田中英道〈たなか・ひでみち〉は、『古事記』や『日本書紀』が創作された神話ではなく、実際にあった歴史をエピソード化したものだと指摘している。

 私も含めて現代人は皇室に対する敬語もきちんと使えないことだろう。その意味からも皇統を中心とした教科書が編まれるべきなのだ。

 何にもまして日本の近代史が簡潔に編輯(へんしゅう)されていて、一読後見通しがよくなる。戦前の教科書ではあるが、戦闘へと誘(いざな)うような過激な記述は見当たらない。むしろ穏当と言ってよい。

 戦後教育の教科書が意図的に皇統を削除し、学生を日本の伝統から断絶するところに目的があったことがよく理解できた。

 尚、本書に倣(なら)い、当ブログのカテゴリーも「日本史」から「国史」に改めた。